【意訳版現代語訳】地の巻 ホツマツタヱ18文 オノコロと呪ふの文
ホツマツタヱ18文の現代語訳を「読みやすさ」と「まとまり」を重視して意訳しました。
詳細な逐語訳や原文を確認したい方は、冒頭のリンクから個別ページを参照してください。
ホツマツタヱ18文のあらすじ
オノコロ(国家・世界秩序)の成立と、天地創造から人類誕生、初期統治、暦・農業の起源、そして「オノコロ」という語の本義が総合的に語られた文(あや)です。
1. オノコロの成立と二尊の国造り
アマテルは、タカマ(中央政府)は諸国の中心=オノコロであると述べ、イサナギ・イサナミが浮橋に立って国造りを始めた経緯を語る。二尊は経・矛(法と武力)をもって国造りを行い、その努力の結晶がオノコロ(国家)となった。二尊は実柱を回ってアワウタを詠み、万物・万人を生み出したとされる。
2. 天地創造と五要素の生成
アメミヲヤが手印を結んで息を吹き、泡と泥が回転して天地が分かれたと語られる。手印の順序に従って、天(非物質界)、地(物質界)、日(月)、空、風、火、水、埴が生成され、五要素が整う。これらの陰陽要素が交わることで最初の人・ミナカヌシが誕生し、星として子を広める御祖神となった。
3. クニトコタチによる初期統治
ミナカヌシ(初代クニトコタチ)は地上を巡って「トコヨの道(調和の統治理念)」を教え、世界を治めた。八御子であるクニサツチは八方に子を生み、これが君・臣・民の三階層の起源となる。三代目トヨクンヌの子らは天に昇り、アナミカミ(三十二神)となったとされる。
4. 暦(スス暦)の制定と長期時間観
トヨクンヌの御子ウヒチニは真榊を植えて年数を数え、これが暦の起源となった。真榊は六十年で三尺、六百年で十枝、六万年で千枝となり枯れるという超長期スケールで語られ、天地開闢から三千万年後にキ・ミ(男女尊)が治める時代に至る。国は二十鈴(120万年)にわたり安定したとされる。
5. 農業の成立と民の教育
六代オモタル・カシコネの時代に鋤・鍬が民に与えられ、農業が始まる。民の中に才のある者・ない者が現れ、適材適所で役割を分けて教育し、統治した国を「オノコロシマ」と名付けた。
6. オノコロという語の本義
ニニキネの問いに対し、アマテルは「オノコロ」の語源を音・手印・自然現象から説明する。「オ(央)」「ノ(和)」「コ(肥)」「ロ(路)」の四つが和合して国が治まるとされ、これがオノコロの本義である。地震や悪夢、雷などの際に唱える祈り(オノコオノコ、ホオコホサワソヒナオリ)が示され、言霊の力が強調される。
意訳文
オノコロのいわれ
天晴れて、和やかに御幸が行われていた時のこと。
アマテルは「タカマ(中央政府)は各地の国々の状況が集まるオノコロ(中核)である」と言い、笑んで中央の巌(いわお)に鎮座した。
この時、傍らにいた臣と天御孫のニニキネが謹んでオノコロのいわれを尋ねると、アマテルは次のように説明した。
「イサナギ・イサナミの二尊は浮橋(中央・ヒタカミ・根国の三国の中心)に立ち、『この下に国は無いのか』と言って国を造ることにした。
そこで経・矛(法と武力)を以って国造りを開始した。その時のサクルミホコノシタタリ(努力の結晶)がまとまってオノコロ(国家)となったのだ。
二尊は天(ヒタカミ)より下って結婚し、実柱を回ってアワウタを詠み、オノコロ(国家)に万物(万人)を生んだのである」
天地創造から人の誕生まで
アマテルは続けた。
「昔、天地の泡と泥が分かれていなかった頃。
アメミヲヤは『ア』の手の形を結んで息を吹いた。すると泡と泥が混ざり、回り始めた。
次に『ウヰ』と『ウヌ』、『アウヌ』の手の形を結んで天を創った(宇宙や非物質界を指す)。
次に『ウヌア』を交えて『ウハ』の手の形を結び、『ウヒ』を地球とした(地球や物質界を指す)。
次に『カ(明・上)』の手の形を結び、ムネホ(陽の核)を選んで日として丸め、赤宮(太陽の位置)と定めた。
次に『シ(白・下)』の手の形を結び、ミナモト(陰の核)を選んで月として丸め、白宮(月の位置)と定めた。
次に『ウン(熟・美)』の手の形を結び、ウツロヰ(空)を馬とした。
次に『イニ(往ぬ)』の手の形を結び、シナト(風)をクツワ(もしくはタヅナ)とし、光(火)を鞭とした。
そして『オ(収・治)』の手の形を結び、クニタマ(地球)を乗り巡ったのだ。
この際の音は『ホオコホ(ゴロゴロ)』である。
この後、ウビコ(泥塊)が煮えて山となった。
次に『ノ(退)』の手の形を結び、野風を吹かせて土地が乾くと馬蹄の跡は野や道となった。
また『シ(月)』の霊によって山に滴りが流れると海が出来た。
『カ(日)』の神霊は乾いた土地を喜んだ。
次に『ウハ』の手の形を結び、地と天(陰と陽)を分けた。
『アイウエオ』に当たる空・風・火(陽性の要素)と水・埴(陰性の要素)が交わるとミナカヌシ(最初の人間)が生まれた。
ミナカヌシはヤオモ(あらゆる方面)に子を生んだ。
この人(ミナカヌシ)は星であり、この星は種を広める御祖神となった」
クニトコタチによる統治
アマテルは続けた。
「人が生まれて蠢きだすと『トコヨの道(調和の統治理念)』を教えることにした。
そこでクニトコタチ(初代の君主=ミナカヌシ)が地上を巡り、生まれた地を統治していった。これがオノコロである。
また、クニトコタチの八御子をクニサツチという。
クニサツチは『ヤモヌシ(世界各国の主)』となり、ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ(東西南北の八方)の地に子を生んだ。
これが君・臣・民のミクタリ(三件)となった。
三代目クニトコタチであるトヨクンヌの生んだ百余りの子は天に行った。
そして『アナミカミ(天並神)』や『ミソフカミ(三十二神)』となったのである」
スス暦の制定
アマテルは続けた。
「トヨクンヌの御子であるウヒチニは、モモヒナ(スヒチ)を愛でてマサカキ(真榊)を植えて数えた。
これが今の暦を数える始まりとなっている。
真榊は六十年で三尺となり、六百年で十枝が生え、六万年で千枝となって枯れ尽きる。
五百本の植え継ぎを経た後、最初の真榊の植え継ぎをキ・ミ(男女尊)の御業(仕事)とした(開闢から3000万年後のこと)。
キ・ミらが諸共に治めるようになった後、二十鈴(120万年)に余る頃まで国は安定していた。
それは六代のオモタル・カシコネの時代に当たる」
農業の成立
アマテルは続けた。
「オモタル・カシコネの二尊が継ぐと、民にあまねく鋤・鍬(農具)を与えて農業を教えた。
この際、青人草(民)の中にも才のある者とそうでない者が現れた。
そこで才ある者は重用し、そうでない者は下働きに用いた。
こうして民を教育して統治した国を『オノコロシマ』と名付けたのである」
オノコロのまとめ
この時、ニニキネが次のように尋ねた。
「御祖(アメノミヲヤ)が巡った時の『ホオコホ』という音からオノコロに転じたのですか?」
これにアマテルは次のように答えた。
「『ホオコホ』とは複数の音が混じった音なのだ。
よく聴けばクルマ(馬)の駆ける音は『キイン』、ナルカミ(雷)の音は『ホオロホオロ』であるぞ。
『オ』という音は『コワ』に収まる『ヲ』のオシテである。
野風に乗るシナト(風)の音は『コオコオ』である。
馬の蹄が踏んだ跡の野には人が生まれ、調和する様は『ノ(和)』の手の形である。
ネワ(肥えた土地)は喜ばれ、その様は『コ(肥)』の手の形である。
ヒトナルミチ(一人前となる教え)は『ト(調)』を用い、その基礎は『ロ(路・法)』の手の形を結ぶ。
『オ・ノ・コ・ロ(央・和・肥・路)』の四つは、和合することで地(くに)が治まるのである。
この四つを意図して分ければ地震が起こり、これを治めるには『オノコオノコ』と祈るべし。
また、童が寝ている時にうなされていれば『オノコオノコ』と言いながら手のひらで撫でるがよい。
また、雷が鳴り響き、止まらなければ『ホオコホサワソヒナオリ(ゴロゴロうるさいぞ収まれ)』と祈るべし。
また『トトムルヲノコリ(留まり和し恵む)』と童の額を押せば、童はうなされずに済むぞ。
以上がオノコロのいわれである」
注釈
登場人物
・アマテル:『記紀』の天照大神に比定。男神。日の神。創造神アメミヲヤの顕現
・ニニキネ:『記紀』の瓊瓊杵尊に比定。オシホミミの御子。アマテルの孫
・イサナギ:『記紀』の伊弉諾尊に比定。七代君主の男尊。アマテルの父
・イサナミ:『記紀』の伊弉冉尊に比定。七代君主の女尊。アマテルの母
・アメミヲヤ:『記紀』の天御中主神に比定。万物の根源神たる神霊
・ミナカヌシ:『記紀』の天御中主神に比定。五要素の交わりにより生じた最初の人
・クニトコタチ:『記紀』の国常立尊に比定。クニサツチより前の神々の総称
・クニサツチ:『日本書紀』の国狭立尊に比定。二代目に当たる世代の各国の君の総称
・トヨクンヌ:『記紀』の豊斟渟尊に比定。三代君主
・ウヒチニ:『記紀』の埿土煮尊に比定。四代君主の男尊
・スヒチ:『記紀』の沙土煮尊に比定。四代君主の女尊
・オモタル:『記紀』の面足尊に比定。六代君主の男尊
・カシコネ:『記紀』の綾惶根尊に比定。六代君主の女尊
関連知識
鈴暦(天の真榊)について
ホツマにおける暦は「天の真榊(あまのまさかき)」という植物によって管理されています。この真榊は「鈴の木(すずのき)」とも呼ばれており、ここでは便宜上「鈴暦」として説明させてもらいます。
この天の真榊とは、いわゆる榊(さかき)のような植物だと思われますが、成長スピードや寿命が全く異なります。この真榊の枝が伸びる期間や、枯れるまでの期間は一定であるとされ、その長さなどで暦を計測していたとされています。
ホツマやミカサフミには、以下のように記されています。
・一 年:真榊の枝が半寸伸びる期間(これを「一穂」と数える)
・六十年:真榊の枝が三尺に達し、新たな枝が生える(これを「一枝」と数える)
・六万年:千枝となって枯れる(これを「一鈴」と数える)
真榊は六万年で枯れてしまい、自生もしないため、暦を繋ぐには人の手で植継ぎを行う必要があるとされます。この植継ぎの儀式は和つ君(中央政府の総帥)の仕事とされたため「天の真榊」とも呼ばれるとされます。
なお、真榊の親木から植え継げるのは五百本(三千万年分)までが限度とされており、その後は別の苗木を一から育てなければならないとされます。そのために「五百継ぎの天の真榊」とも呼ばれています。
また二十四本~二十五本目の真榊に植継ぐ時は「陽陰の節」に当たり、陽陰のバランスが崩れるため、凶事が起こりやすいとされているようです。
ホツマやミカサフミによれば、この真榊のルーツはミナカヌシの時代にヱ尊とト尊により真榊が暦として使われ始め、そこから植継がれてきたとされます。四代目ウビチニ・スヒヂの時代に真榊の植継ぎが五百回に達し、新たに植え継ぎを行うことになった際にキ・ミ(男女尊)の仕事に定められたとされています。
それから二十鈴(百二十万年)までは安定したとされますが、六代オモタル・カシコネの代で世継ぎが途絶えることになり、君主不在で天で植え継ぎも途絶えることになったとされます。
ですが、ヒタカミを治めていた初代タカミムスビであるキノトコタチが真榊を植え、ヒタカミの統治者であった代々のタカミムスビも真榊を植え継いでいたため暦は途切れず、二十一鈴百二十五枝にアマテルが誕生したことで、天の君主となったアマテルが真榊を管理することになったと記されています。
18文に登場するおまじない
・子供がうなされている場合は『オノコオノコ』と言いながら手のひらで撫でると良い
・子供がうなされるのを予防したければ『トトムルヲノコリ』と言いながら子供の額を押す
・雷が鳴り止まなければ『ホオコホサワソヒナオリ』と言いながら祈ると良い
『記紀』との主な違い(AI分析)
オノコロ(国生み)の位置づけ
ホツマでは、オノコロは「国家の中核(中枢機能)」を意味し、タカマ(中央政府)に集まる情報の中心として説明される。国造りは経・矛(法と武力)を用いた政治的プロセスとして描かれ、努力の結晶としてオノコロが成立する。一方、『記紀』ではオノコロ島はイザナギ・イザナミが最初に生んだ島であり、政治的中枢という概念はなく、象徴的な「最初の島」として描かれる。
天地創造の方法
ホツマでは、天地創造はアメミヲヤが手印(ア・ウヰ・ウヌ・ウハ…)を結び、泡と泥を回転させ、日・月・空・風・火・水・埴を順次生成するという体系的な宇宙論として語られる。五要素の交わりから人(ミナカヌシ)が生まれるとされる。一方、『記紀』では天地は自然発生的に分かれ、神々が次々と生成する形で描かれ、手印や五要素の体系的説明は存在しない。
最初の人間の扱い
ホツマでは、ミナカヌシは「最初の人間」であり、星として子を広める御祖神とされる。人類の起源が宇宙論と結びついて語られる。一方、『記紀』ではミナカヌシは「造化三神」の一柱であり、人間ではなく抽象的な神格として描かれ、人類の起源とは直接結びつかない。
クニトコタチの役割
ホツマでは、クニトコタチは地上を巡って「トコヨの道(調和の統治理念)」を教えた初代の君主であり、実際に統治を行う存在として描かれる。八御子(クニサツチ)が世界各地に子を生み、君・臣・民の三階層が成立する。一方、『記紀』ではクニトコタチは天地開闢の初期に現れる神であり、統治者としての具体的活動は語られない。
暦の成立
ホツマでは、真榊を植えて年数を数えるという具体的な暦の起源が語られ、六十年・六百年・六万年といった長期スケールで時間が説明される。一方、『記紀』では暦の成立過程は語られず、時間体系に関する具体的説明は存在しない。
農業の成立と民の教育
ホツマでは、オモタル・カシコネの時代に鋤・鍬が与えられ、農業が制度的に始まるとされる。民の能力差に応じて役割を分け、教育して統治した国を「オノコロシマ」と名付けたと語られる。一方、『記紀』では農業の成立は神話的象徴として語られるのみで、教育制度や統治の仕組みは示されない。
オノコロの語源
ホツマでは、「オ(央)・ノ(和)・コ(肥)・ロ(路)」の四つの手印の意味を組み合わせ、国家の調和原理として説明される。また、雷・風・馬蹄の音など自然現象との関連も語られ、言霊による祈り(オノコオノコ)が示される。一方、『記紀』では語源説明はなく、オノコロは単に「最初に生まれた島」として扱われる。
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