【意訳版現代語訳】地の巻 ホツマツタヱ22文 オキツヒコ火水の祓

ホツマツタヱ22文の現代語訳を「読みやすさ」と「まとまり」を重視して意訳しました。

詳細な逐語訳や原文を確認したい方は、冒頭のリンクから個別ページを参照してください。




ホツマツタヱ22文のあらすじ


火水(ひみつ)の原理と、竈神・干支神・八将神の成立、さらに天神地祇との誓約が体系的に語られた文(あや)です。

1. 火水の真髄と竈神の起源

オキツヒコが「ヒミツノミツ(火水の真髄)」を掌り、竈神の本源が語られる。天地開闢の初めにクニトコタチの霊的懐妊が起こり、そこから五座の神(キツヲサネ)が生まれ、天と地の政を分掌する基礎が築かれる。

2. 干支神と八将神(ヤマサ神)の成立

日月の生成とともに、干支を司る十一神が誕生し、そこから八柱の御子が生まれる。イサナギ・イサナミの詔により、八柱の神々が干支の守護神として定められ、これが八将神(ヤマサ神)となる。

3. オコロ(土竜)の誕生と守護の任

カグツチとハニヤスの因縁から万のオコロ(土竜)が生まれるが、竜になれず棄てられた存在とされる。のちにニニキネの詔により、オコロは竈・門・井・庭の四所を季節ごとに守護する役目を与えられ、住居と大殿の根元を守る存在となる。

4. 天神地祇の誓約と火水の清祓

オキツヒコが火水を結んで天と地を繋ぎ、この地がタカマノハラの写しとなる。アマテルは天神地祇に対し、雷・風・火・水・災害に応じて各神が現れ働くべき誓いを定める。最後にアマテル自身が火水の清祓を宣言し、これを代々の宝として八将神に清めを命じて文が締めくくられる。

意訳文


オキツヒコとヒミツのミツ


ミカマドノカミ(竈の神)の「ヒミツノミツ(火水の真髄)」はオキツヒコが握っている。これは、ニニキネがニハリ宮へ遷宮する際、詔によって守の任を賜ったことに始まる。

オキツヒコは、カシキノユフ(赤・白・黄の布)の幣を掲げて八百万の神々を集わせ、タカマノハラ(アメノミヲヤの治める領域=全宇宙)の神司(神官)である天照大御神(アマテル)を祝ぎ奉る宣言をした。

「暮らしの向上を司る『ミカマノホギノカミ(竈の神)』の由来は次の通りである。

天地開闢の初め、後にクニトコタチとなる神霊の霊的懐妊が成され、それが熟す日に『キツヲサネ(東西央南北)』という御名を持つ『五座(ヰクラ)の神』が誕生した。

クニトコタチの七代にわたる治世では、天(神霊界に属する事柄)の政は『トホカミヱヒタメのヤモトカミ(八元神)』に守らせ、地(物質界に属する事柄)の政は『キツヲサネとアミヤシナウのムロソヒカミ(室十一神)』に守らせた。

ゆえに、この神々を『ミカマドノヱトモリカミ(竈のヱト守神・暦神)』と称えるのである。

日月の生まれた頃には、暦における和合を表す『キツヲ(東・西・央)』がトツギ(婚儀)を行って『トシノリ神(干支を告げる神)』を誕生させた。このトシノリ神(キツヲサネとアミヤシナウの十一神)をヱトモリ(干支守)とし、守り育てることで八柱の御子が生まれた」

ヤマサ神の由来


オキツヒコは続けた。

「陽陰二尊(イサナギ・イサナミ)の詔により、次のような干支の神が定められた。

・一番目の名は、ウツロヰの神
・二番目の名は、シナトベの神
・三番目の名は、カグツチの神
・四番目の名は、ミヅハメの神
・五番目の名は、ハニヤスの神
・六番目の名は、ソロヲヲトシ(繁大年)の力を守るヲヲトシ神
・七番目の名は、水埴の基を領するスベヤマズミの神
・八番目の妹の名は、火の鎮めであるタツナミ(立浪)を治めるタツタヒメ

この神々はこのような御名を賜り、日夜見神(暦の神)を助けるヤマサ神(八将神)となった」

オコロカミ


オキツヒコは続けた。

「このヤマサ神(八将神)が常に巡って守護するため、ヒミツノワサ(自然災害)という障害は起こらなかった。こうした障害のない治世に、カグツチとハニヤスが因んで万のオコロ(土竜)を生んだ。しかし、これらは竜へと成ることができなかったために棄てられたという。

その後、ヲヲクヌカミ(クシヒコ)の報告を受けて、オコロに対してニニキネより次のような詔が下った。

『オコロの守よ。汝には次のように命じる。

春は竈、九尺底に座せ
夏は門、三尺底に座せ
秋は井、七尺底に座せ
冬は庭、一尺底に座せ

新宮の造営予定地をかき回すことを一途になすが良い。兄オコロはスミヨロシ(住居)を守護し、弟オコロは常にウテナ(大殿)の暗所である中柱(大黒柱)の根元に住み、ヤマサ神と共に日々の暮らしを守るべし。その誓いに己柱を立てよ』」

天神地祇の契約


この時、オキツヒコがアマツミコト(天つ御言)の定めを成し、三カシキノユフ(赤・白・黄の布)の幣に「ヒミツ(火水)」を結んだ。火と水、すなわちオキツヒコが天と地を繋いだことで、この地もまた「タカマノハラ(天上界の写し)」となったのである。

これを受け、アマテルは天神地祇に対して代々の誓いの宣言をした。

「もし、鳴神(雷)が騒いで地震を起こそうとするならば『ヤナヰカクロヒ(東北の一柳)』を居社とし、ヱトの60日余りと空を守るウツロヰの神が現われよ。そして、鳴神も妙技を為して地震を鎮めさせよ。

もし、叢雲が日光を遮って道の明かりを奪うならば、シナトベの神が現われよ。そして、シナトノカゼによって叢雲を押し払わせ、夜明けを知らしめさせよ。

もし、火の穢れがあったならば、カグツチの神が現われよ。そして、その時の火の勢いにかかわらず、火打ちを改めて清いアタゴ(燃焼)をもたらし、竈の清浄を守護するのだ。

もし、火災が起きたならば、タツタヒメの神が現われよ。そして、たとえ炎が迫ってきていてもタツタの鎮めによって火災を除くのだ。

もし、井戸の水が絶えて食糧難が起こるならば、ミヅハメの神が現われよ。そして、水瓶に井手の清水が湛えさせよ。また、水瓶の清浄を一途に保っておくのだ。

もし、水害が起こるならば、スベヤマズミの神が現われよ。そして、たとえ長雨によって水が溢れようとも、山に木々を繁らせて土砂災害を持ち堪えさせるのだ。また、地下水の水路を深くし、常に井堰を守るべし」

この誓いの宣言を受けた神々は、これを著しく守った。

アマテルの火水の誓い


誓いが終わると、トシノリ神の左右に侍るオオトシ神、ハニヤスヒメ、オコロも共に誓いを立てた。このように大御神(アマテル)がカンホキ(神祝)を終えると、最後に「カナキユヒのホキノリ(締めくくりの祝宣)」が行われた。

「焚火も、水も、竈も清ければ、皆清い。火水の密を司るタカラオノ(包丁)に荒みが無ければ潔い。調理された食物をヒモロケ(神霊に捧げる供物)として捧げる際の器も清らかにしておくのが『ヒミツノキヨハラヒ(火水の清祓)』である」

天照大御神(アマテル)はこの誓いを代継ぎの宝とするべく、その功を「活・優・跳の清祓」として留めた。そして、謹んでヤマサ神(八将神)に対し「火水を清め給え」と念入りに申し付けたのである。

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注釈


登場人物


・アマテル:『記紀』の天照大神に比定。八代君主の男尊。創造神アメミヲヤの顕現
・ニニキネ:『記紀』の瓊瓊杵尊に比定。オシホミミの二男。アマテルの孫
・クニトコタチ:『記紀』の国常立尊に比定。初代君主を指す
・イサナギ:『記紀』の伊弉諾尊に比定。七代君主の男尊。アマテルの父
・イサナミ:『記紀』の伊弉冉尊に比定。七代君主の女尊。アマテルの母
・オキツヒコ:『記紀』の奥津日子神に比定。クラムスビの子。後にカマトカミとなった
・トシノリカミ:五臓神と六腑神のこと。年の干支を告げる神
・ヤマサカミ:方位神である八将神に比定。地の十一神から分れ出た八神霊とされる
・オコロ:モグラ(土竜)のことだと思われる。カグツチとハニヤスの子とされる
・ウツロヰ:方位神の大将軍に比定。ヤマサの第一。空・空間・空気を司る自然神
・シナトベ:ヤマサ神の第二。風を治める神
・カグツチ:ヤマサ神の第三。火の穢れを防ぎ、火を守る
・ミヅハメ:ヤマサ神の第四。泉を清め、飲料水を守る
・ハニヤス:ヤマサ神の第五。土を清め守る
・ヲヲトシ:ヤマサの第六。作物の収穫を守る。オオトシクラムスビではない
・スベヤマズミ:ヤマサの第七。水と山を治める神霊
・タツタヒメ:ヤマサ神の第八。宮の敷居と鴨居に居て、火の災いを除く

関連知識


ヤマサ神と八将神について

ホツマにおけるヤマサ神は、干支の働きを担い、天地の異変を察知して災いを未然に防ぐために配置された守護神であるとされます。火・水・風・雷・土といった自然の働きを分担し、暦の運行と連動して季節・天候・災害の兆しを読み取り、必要に応じて働く「自然秩序の調律者」として役割が与えられています。ホツマにおける八柱のヤマサ神は、干支・暦・災害鎮護・宮守りを総合的に司る神で、以下のような順序と属性があります。

1.ウツロヰの神(空)
2.シナトベの神(風)
3.カグツチの神(火)
4.ミヅハメの神(水)
5.ハニヤスの神(土)
6.ヲヲトシ神(豊作)
7.スベヤマズミの神(鎮火・鎮浪)
8.タツタヒメ(治水・治山)

現代知られる八将神は、平安時代に陰陽道において定められた神々で、「牛頭天王の八王子」をルーツとするという説が有力視されています。主に「方位の吉凶判断に特化した神々」として知られており、年ごとに巡る方位神として整理され、家相・方位除け・厄除けの基準とされています。陰陽道の八将神は以下のとおりです。

・太歳神(たいさいしん):年の主神
・大将軍(だいしょうぐん):最強の凶神
・太陰神(たいいんしん):陰の気を司る
・歳刑神(さいけいしん):刑罰・障り
・歳破神(さいはしん):破壊・衰退
・歳殺神(さいせつしん):殺気・断絶
・黄幡神(おうばんしん):争い・不和
・歳徳神(としとくじん):福徳・吉方位

ホツマのヤマサ神と陰陽道の八将神は「八柱の神が巡って働く」「暦・方位と関係する」「年や季節の変化と連動する」といった点が共通しています。ですが、決定的な違いとして、ホツマのヤマサ神が「自然現象を司り、災害を察知し鎮める」という防災システム的な役割を担うのに対し、陰陽道の八将神は「方位の吉凶を判断する」という暦術・占術的な役割を担っていることが言えます。

ウツロヰと大将軍について

ホツマにおける「ウツロヰ」は空(空気・空間)を司る神であり、鳴神(雷)や地震を支配しているとされます。ヤマサ神の第一に据えられていましたが、ニニキネが新宮に御幸するという祝の儀式の際に雷を落として垣を破壊したため、アマテルによってヤマサ神から除名されそうになります。この際、ニニキネがかばって「ウツロヰを改心させる」と訴えたため除名は免れましたが、ウツロヰはヤマサ神における序列の最後尾に据えられ、東北の一柳を社として鬼門の方角を守護するよう命じられます。

この後、ウツロヰは一年365日のうち「干支の60日の循環(60日✕6巡)」では足りない5日間を補って守護する役目を与えられますが、自分の社の付近で農業をする民が田畑に堆肥(糞尿)を撒くことに怒って屋造りの邪魔をするようになったので、ニニキネから干支の内「アヱ」から「ヤヱ」に対応する5日間は東北(鬼門)の守護を離れて遊びに行けと命じられて、その間に屋造りをするようになったとされます。

一方、陰陽道における「大将軍」は方位の吉凶を司る八将神の一柱とされます。別名を「太白神」と言い、古代中国では金星の神格化とされ、戦争や殺戮を象徴するとして恐れられていたとされます。また「艮の金神」という日本の民間信仰における凶神とも同一視されており、さらに疫神として知られる「牛頭天王の八王子」とも結びつけられたことで「最強の凶神」として知られるようになっています。

大将軍は特に暦や方位の面で恐れられており、3年ごとに居処を変え、その方角は万事に凶とされています。特に土を動かすことが良くないとされますが、大将軍の方角は3年間は変わらないため、その方角を忌むことは「三年塞がり」と呼ばれています。ただし5日間の遊行日が定められ、その間は凶事が無いとされています。

ホツマのヤマサ神と陰陽道の八将神において、ウツロヰと大将軍には共通する点が指摘されます。それは「5日間の遊行日」が存在することです。双方において、この5日間の遊行日に禁忌とされる物事をすることが許されています。また、ウツロヰはニニキネから「ウツロヰノヲマサキミ(ウツロヰの大将君)」という名を賜っており、これも大将軍と相関するような点であると捉えられます。

ただし、ウツロヰに関しては、ホツマの暦法における一年を30日✕12ヵ月=360日に足りない5日を補って守護する「守護日」と、干支の内「アヱ」から「ヤヱ」に対応する5日間(干支の60日の内25日間)の「遊行日」が設定されています。一方で、大将軍には一年における四半期の内の5日間が「遊行日」に設定されており、5日✕4巡=計20日になるので、ウツロヰの遊行日とは日数が異なります。

参考:ほつまつたゑ翻訳ガイド(ヱト)