現代語訳

・以前、サユリの花見に行った際、君(タケヒト)の御幸はサユカワに到り、 クメの家にて一夜の宿を取った
 ・その際、イスキヨリヒメ※はカシハテ(膳方)として御食を進めれば、皇はこれを召そうと御歌を歌った
  ・『アシハラの 優雅き居屋に 菅畳 弥多敷きて 我が二人和ん』
 ・御歌と共にイスキヨリヒメを召し、後に局に据え置いた
・ある時、タギシミミ※乙下侍(イスキヨリヒメ)に恋い焦がれ、父に乞えば その承諾が得られた
 ・しかし、乙下侍は君がタギシミミを呼ぶ怪しき含みを悟り、操を伝える連歌を歌った
  ・『天つ地 娶ります君と など割ける 止』(継句の拒否、すなわち、君に操を立ててタギシミミに嫁ぐことを拒否している)
 ・これにタギシミミが進み応えて返歌した
  ・『熟乙女 直に会わんと 我が割ける 止』(タギシミミは自らの願望をイスキヨリヒメに伝えた)
 ・しかし、その場で両者の意向が合わなかったことから、君は「追って伝える」と言い、タギシミミはその場を去った
・これを小侍女がクシミカタマに伝えると、クシミカタマは君に「これはシムの恥となります」と申し上げた
 ・君はそれに頷いて内密に処理した
 ・なお、この度の乙下侍とはユリヒメである(イスキヨリヒメはユリヒメと名を変えて局の乙下侍に据えられていた)

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用語解説

・イスキヨリヒメ:クメの娘で、タカクラシタの妻となる
・タギシミミ:タケヒトとアヒラツヒメの子。『記紀』でいうタギシミミに当たる

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原文(漢字読み下し)

・先(さき)にサユリの
・花見(はなみ)とて 君(きみ)の御幸(みゆき)は
・サユ郷(かわ)に 一夜(ひとよ)寝(い)ねます
・クメか家(や)の イスキヨリ姫(ひめ)
・膳出(かしはて)に 御食(みけ)進(すす)むれは
・皇(すめらき)は これお召(め)さんと
・告(つ)けの御歌(うた)に

・治原(あしはら)の 優雅(しけこ)き居屋(おや)に
・菅畳(すかたたみ) 弥多(いやさや)敷(し)きて
・我(わ)か二人(ふたり)和(ね)ん

・これに召(め)し 局(つほね)にあるお
・タギシ御子(みこ) 深(ふか)く焦(こか)れて
・父(ちち)に乞(こ)ふ 頷(うなつ)き諾(うは)ふ
・父(ちち)か呼(よ)ふ 怪(あや)しき留(とと)めお
・悟(さと)る姫(ひめ) 操連歌(みさほつすうた)

・天(あめ)つ地(つち) 娶(と)ります君(きみ)と
・なと割(さ)ける止(とめ)

・タギシ御子(みこ) 進(すす)み応(こた)えて

・熟乙女(にやおとめ) 直(た)に会(あ)はんと
・我(わ)か割(さ)ける止(とめ)

・和無(な)きお 追(お)ってと言(い)えは
・御子(みこ)も去(さ)る 小侍女(ことめ)か告(つ)くる
・クシミカタ 君(きみ)に申(もふ)さく
・シムの恥(はち) 君(きみ)頷(うなつ)きて
・密(ひそ)かにし このたひ賜(たまわ)ふ
・乙下侍(おしもめ)は このユリ姫(ひめ)そ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります