現代語訳

・その時、オオモノヌシ(クシヒコ)が「ハタレを破る者の名をヤヱガキ(八重垣)と言うのは何故ですか?」と問うた
・すると、アマテルはこのように詔した
 ・「ハタレの業に対し、近付けなければ弓矢で破り、近づければ太刀で祓う物
 ・故に太刀とは武器では無く身の垣なのである(太刀=盾でもある)」
・また、オオモノヌシは「治める八民の呼び名を"ヤタ"というのは何故ですか?」と問うた
・すると、アマテルはこのように詔した
 ・「鏡は民の心が入る物
 ・入れ物であるが故にヤタカカミ(八尺実の抱み)という
 ・ツルギは仇(敵)を近づけず、断ち祓う物である」
・また、オオモノヌシは「垣に掛かる"ヤエ"とは何ですか?」と問うた
・すると、アマテルは笑んでこのように詔した
 ・「美しくも請える その"ヤヱ"とは、昔 二尊がこれによって国を領した(調和した)ことによる
 ・モノイフミチ(物言う道)のアワウタの、"ア(陽)"は天と父、"ワ(陰)"は母、"ヤ(和)"は我が身(人)である
 ・この"ア・ワ・ヤ"とは、喉より響くハニノコエ(埴の声)、国を調和する種である
 ・"アワ"はアワ国(ナカクニ=中央政府)、"ヤ"は八方の青人草を指し、それによって"ヤタミ"と名付けたのである
 ・ヤタミ※もまた、"ヤ"は家居、"タ"は治む、"ミ"は我が身である
 ・アワ国を家とし、そこから民を率いてヤシマ(八洲)を調和する
 ・家は八つではなく、百千万の民の家を 和を重ね合せた故にヤヱガキ(家重垣)なのである」
・これらを聞いたオオモノヌシは、笑んでこのように申し上げた
 ・「昔、モノヌシの厄を賜った時、これらの意味を深く考えました
 ・しかし、自分では解けなかったのですが、今聞いてようやく意味が分かりました
 ・このヤヱカキがモノノベの名となった由来は、私の心に響きました
 ・なれば、私がモノノベを統べて代々の垣となるのが、私の本分です」
・と、このように誓いを為した

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用語解説

・ヤタミ:八方の民。全国の民。家(和・統)を治める者

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原文(漢字読み下し)

・時(とき)にまた オオモノヌシか
・申(もふ)さくは ハタレ敗(やふ)るの
・名(な)おもかな 問(と)えは和照(あまて)る
・御言宣(みことのり)

・ハタレか業(わさ)は
・近付(ちかつ)けす 弓矢(ゆみや)に敗(やふ)り
・近付(ちかつ)けは 太刀(たち)打(う)ち払(はら)ふ
・身(み)の垣(かき)そ

・また問(と)ふ八民(やたみ)
・治(おさ)むれは ヤタ名(な)は如何(いか)ん

・御言宣(みことのり) 鏡(かかみ)は民(たみ)の
・心(こころ)入(い)る 入(い)れ物(もの)なれは
・ヤタカカミ ツルギは仇(あた)お
・近付(ちかつ)けす

・また問(と)ふ垣(かき)の
・ヤヱ如何(いか)ん

・君(きみ)にこ笑(ゑ)みて
・宣給(のたま)ふは 美(うつ)しくも請(こ)えり
・それヤヱは 昔(むかし)二尊(ふたかみ)
・国領(くにし)らす 物言(ものい)ふ道(みち)の
・アワ歌(うた)の アは天(あめ)と父(ちち)
・ワは母(はは)そ ヤは我(わ)か身(み)なり

・このア・ワ・ヤ 咽(のと)より響(ひひ)く
・埴(はに)の声(こえ) 国(くに)お領(し)らする
・種(たね)なれは アワはアワ国(くに)
・ヤは八方(やも)の 青人草(あおひとくさ)の
・名(な)もヤタミ

・ヤは家居(いえゐ)なり
・タは治(をさ)む ミは我(わ)か身(み)なり

・アワ国(くに)の 家(や)に率(い)て八州(やしま)
・領(し)らすれは 家(や)は八(や)つならす
・百千万(ももちよろ) 重(かさ)ぬる節(ふし)の
・家重垣(やえかき)そ

・時(とき)にモノヌシ
・笑(え)み曰(いわ)く 昔(むかし)モノヌシ
・賜(たま)わりて 深(ふか)く思(おも)えと
・また解(と)けす 今(いま)やふやくに
・これお知(し)る

・これヤヱカキは
・モノノベの 名(な)なりと己(おの)か
・央(を)に応(こた)ゆ てれは統(すへら)の
・弥々(よよ)の垣(かき) 己(おの)か央(を)なりと
・誓(ちか)いなす

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります