【意訳版現代語訳】天の巻 ホツマツタヱ8文 霊還し ハタレ打つ文
ホツマツタヱ8文の現代語訳を「読みやすさ」と「まとまり」を重視して意訳しました。
詳細な逐語訳や原文を確認したい方は、冒頭のリンクから個別ページを参照してください。
ホツマツタヱ8文のあらすじ
人倫の乱れから生じた負の感情が「ハタレ(怨霊)」となって人々に取り憑き、天(中央政府)に仇なす反逆者として各地で蜂起します。それを君主・アマテルをはじめとする精鋭たちが智略や術をもって鎮圧し、「タマカエシ(霊還し)」の法を使って正常に戻すという内容が記されています。個人的に天の巻の中でも最もおもしろい文(あや)だと思います。
1. 罪の連鎖と「ハタレ」の発生
地方官(マスヒト)であったシラヒト・コクミが不義密通の罪を犯し、この二人の「心のねじれ」が実体のない怨念の集合体「ハタレ」を呼び寄せて、各地で反逆者を蜂起させた。
2. カミイクサ(官軍)の結成とアマテルの智略
アマテルはハタレを「人の歪んだ感情が霊体化したもの」と定義。カナサキを軍師(ミソキツカサ)、フツヌシらを指揮官とする官軍「カミイクサ」を結成。アマテルは諸守に対してハタレを破るための「マシナイの種」を授け、それぞれのハタレに対応する戦略を伝授した。
3. 各地の討伐戦と「タマカエシ」
カミイクサの指揮官が各地のハタレと対峙。アマテルは戦いの中で神霊(水神・風神など)を招き、術を封じて敵を捕縛。捕らえた者たちの出自を問い、彼らが本来「人」であったことを認めて、霊を正常な状態へ戻す「タマカエシ」の法を施した。
・カナサキ vs シムミチ(大蛇)
・フツヌシ vs イソラミチ(悪霊)
・タケミカツチ vs ヰツナミチ(猿神)
・カダマロ vs キクミチ(化狐)
・アマテル vs ハルナハハミチ(蝕霊)
・イフキヌシ vs アメヱノミチ(天狗)
4. カダノカミの起源と三狐の配置
カダマロはキクミチ(化狐)を討伐したが、これらの死罪を哀れんで諸守に助命を嘆願した。その結果、アマテルはキクミチらをウケノミタマを守護する眷属に任命した。カダマロは三狐を伊勢・京都・大和に配置し、これが食糧神の神使がキツネというルーツとなった。
5. マフツノカガミ(真直の鏡)
タマカエシの儀式における「マフツノカガミ」は「真実を映す鏡」とされ、その者が化けていたり取り憑かれていても鏡には本来の姿が映すとされる。ハタレらは、この鏡によって正体を暴かれ、映った姿によって その者が騙そうとしているか否かの指標とされた。儀式の後、この鏡は伊勢の「フタミノイワ」に据えられたという。
6. 戦後処理と守(カミ)たちの叙勲
功績のあった守(カミ)たちは、その働きを象徴する称え名を賜り、各地の鎮守や要職を任じられた(『記紀』には記されないが、神社祭神の呼称となっている事例に繋がるような記述が多い)。
意訳文
陽陰の節から生まれるハタレモノ
大御神(アマテル)が天下に示すクシヒル(貴霊)によって、民が豊かに過ごしていた頃のことである。この時、アマテルの遷宮より二十三万二千三百八十二年を経ていたが、そのミカタチ(姿)は若いままで座しておられた。
今年は二十四本目のサクスズを、二十五本目の鈴に植え替えた陽陰の節に当たる。この年は、根国とサホコ国のマスヒト(地方官)の身内であったシラヒトとコクミが、サシミメとクラコを犯すという大事件が起こった年でもあった。このシラヒト・コクミの咎も、北局のモチコとハヤコの計らいによって減刑され、罪人たる二人はアメノオシヒが部下として引き取ることになった。
アメノオシヒがサホコ国のマスヒトとして統治する中、二人はその下で仕えていたが、やがてマイナイ(賄賂)を掴んで忠誠に背いた。こうして罪を重ねるシラヒトとコクミは、遂にオロチ(愚霊)に取り込まれてしまったのである。これに呼応するかのように、法の崩れる節々にハタレのモノが蠢き、恐ろしいサハイ(五月蠅)の如き声を上げ始めた。
ハタレとは
数多の早雉(伝令)が、杼(ひ)を投げるが如き多くの報告を告げる中、タカマ(中央政府)では守議(会議)が行われていた。
その席で、タケミカツチが進み出た。タケミカツチは十六尺の背丈を持ち、万に優れた力を持っていた。タケミカツチは、正体不明なハタレが跋扈する現状を憂い、その対応を危惧する様に訴えた。左の臣・カナサキも、またハタレへの対応に苦慮していた。
そこで、アマテルはハタレの本質をこのように説明した。
「真のハタレとは、天(陽陰)に居るものでも、神でもない。人のねじれた感情が進化して霊体となり、寄り集まった存在である。現状、わかる限りでは、それが集まりムハタレ(六つのハタレ)が存在している。それは次のものである。
ニシキオロチのシムミチ、ハルナハハミチ、ヰソラミチ
三人が指揮するキクミチ、ヰツナミチ
ナルカミを起源とするアヱノミチ
これらのハタレは皆、取り憑いた者のシム(霊)を抜き取り、その者の悪しき業を煽って悪行を為させる。また、憑かれた者はミノホ(日に三度の高熱)に悩まされるという。しかし、恐れることはない。ハタレは神力によって祓い除けることができるからだ。
実体のないハタレに普通の矢は当たらぬが、実体を顕す力を持つ神の矢ならば必ず当たるのである」
ハタレ討伐軍の結成
アマテルの詔が終わると、フツヌシが戦略を問うた。これに、カナサキが応じて次のように述べた。
「我を通さず慈しみを以ってカンカタチ(神の顕現)を成すべきであろう。心の曲がりを正して素直に動けば、カンチカラ(神の力)が発生するのだ。物事を深くおもんばかれば、そこに神の意識が通い、それが物事の調和を保つクシヒル(奇霊)となる。この調和こそが有効な手立てである」
これを聞いたアマテルは喜び、カナサキを軍師たるミソキツカサ(禊司)に任命した。また、フツヌシを副官とし、タケミカツチを随行させた(この官軍をカミイクサという)。そして「力を合わせてハタレを打ち破れ」と詔して「アマノカコユミ」と「ハハ矢」を授けた。
ムハタレの特徴とマシナイの種
ムハタレ(六つのハタレ)には次のような特徴がある。
その軍勢はヤマタ、すなわち八つの部隊である。
その戦力は、九千人の将と七十万の群れという大規模な軍勢である。
その戦法は、垣(防壁・結界)を破り、叢雲を起こす。
さらに、炎を吹き、礫(つぶて)や雷を操り、大地を揺らし、民を惑わすものである。
そのため、アマテルは勢いよく下る早川の瀬にて禊を行った。そして、「ハタレを破るためのマシナイの種(マシナイを実現するための材料)」を調達して諸守に授けた。諸守は「マシナイ種」をもって、ハタレ討伐へと向かった。
カナサキによるシムミチ戦(大蛇)
カミイクサ(官軍)は、まずハタレのシムミチと対峙した。
シムミチは、山川を氾濫させ、巨大な大蛇に炎を吐かせて驚かす術を用いた。この戦術になすすべを失ったカナサキは、一時戦場を離れて天(中央政府)に報告した。すると、アマテルは「カダスス(葛末)」と「ワラヒナワ(蕨縄)」を授けた。
戦場に戻ったカナサキは、これを攻め手の諸守に授けてまじないを施すと、ハタレモノ(悪霊たち)の術はたちまち消え失せた。術が効かなくなったハタレモノが戦場から逃げ出すと、これをカミイクサが一網打尽にして生け捕りにした。
また、生け捕ったハタレマ(取り憑かれた者)は日照りで乾いた場所に繋いで置き、これを囮にすることで、遂にハタレカミ(ハタレの頭領)をも生け捕ることに成功した。ハタレカミは牢に入れられ、三千人のモノマ(取り憑かれた者)は その地方の役人に預けられた。
こうしてカミイクサはシムミチを討伐し、凱旋を果たした。
フツヌシによるイソラミチ戦
その後、早雉(伝令)が飛んできて、根国の立山に現れたオオハタレ(ハタレの大軍)が安濃に集結しているとの報告した。そこで、すぐに諸守を集めて会議をした結果、フツヌシを派遣して討伐させることに決まった。
フツヌシがカミイクサを率いて戦場に向かうと、イソラミチはイソラカミ(イソラの醸成)を行って野山を変貌させ、叢雲を湧かせたり、幾日(複数の太陽)を見せてカミイクサを驚愕させると、その隙を突いて棘矢(トゲの付いた矢)を放って攻撃してきた。その際、フツヌシは棘矢を掴んで指を負傷してしまったため、一旦退いて天(中央政府)に戦況を報告した。
この報告に対し、アマテルは思考を巡らせて、イソラミチへの対策として「ヲコシ(お菓子)」と「フキ(蕗)」を授けた。また、フツヌシは棘矢を掴んでも傷つかないように弓懸(手袋)を付けることにした。
再び戦場に戻ったフツヌシが、飛んでくる棘矢を弓懸で掴み取ると、ハタレは「矢に当たっても甦るとは…あの者は傷付かない身体なのか?!」と驚愕した。そこでフツヌシは「こちらには弓懸があるので痛くも何とも無いわ!さあ、これを受けるがいい!」と言ってハハ矢を放った。
このハハ矢をハタレが掴むと互いに笑い合い、そこでフツヌシが「アマテル神より土産がある!さあ、このヲコシを受け取るが良い」と言って、ヲコシを差し出した。これにハタレは喜んで「神は何故、我々の好物を知っているのだ?まさか貴様らは我々に降伏する気なのか?」と問うと、フツヌシは笑いながら「いやいや、殺す気に決まっているだろう」と答えた。
これにハタレは怒って「何故だ!」と問うと、フツヌシは「お前達が誇らしげに化けて惑わすため、化けの源のイソラ(悪霊)を討つのだ!」と答えた。これを聞いたハタレはさらに怒り、口汚く罵り始めたので、フツヌシがさらにヲコシを投げ入れるとハタレマ(取り憑かれた者)たちは奪い合い、味方同士で争いを始めた。
その隙を見て、味方のカミイクサが蕗(ふき)を焚き燻(いぶ)してハタレどもに煙を浴びせると、ハタレは咽(むせ)て逃げていったので、そこを追い詰めて一網打尽にした。そこで捕らえたハタレマ(取り憑かれた者)は千人にのぼった。
しかし、イソラカミ(イソラの頭領)は「これも退屈しのぎにしかならぬ。昼寝でもするか」と余裕な態度で、戦をやめることはなかった。そこで、カミイクサは昼寝をするイソラカミの隙を突いて四方を囲み、遂にイソラカミを生け捕りにして牢屋に入れた。
そして、千百人のモノマを生け捕りにし、その地方の役人に預けて凱旋を果たした。
タケミカツチによるヰツナミチ戦(猿神)
今度はハタレが伊予の山からキシヰ国(紀州)へと渡り、迫り来るとの報告がトノミヤ(突宮)に入った。そこで諸守を集めて会議が行われた結果、タケミカツチが指揮官に任命された。アマテルはタケミカツチに「フトマカリ(揚餅)」を授けて「急ぎ討伐せよ」と命じ、タカノ(高野)の地へと派遣した。
その頃、タカノではヰツナミチが万の獣(あらゆる獣)に取り憑き、その勢力を拡大させていた。
タカノに到ったタケミカツチがヰツナミチと対峙すると、群れの中からハタレカミ(ハタレの頭領)が進み出て「シムミチとイソラミチの二人を返せ、さもなくば神を捕らえてくれようぞ」と脅しをかけてきた。タケミカツチは、これを笑い飛ばして「我が力は万に優れており、雷でさえねじ伏せる。お前もねじ伏せられたくなくば、大人しく捕まるがよいわ」と返答した。
これにハタレは激昂して戦が始ると、カミイクサ(官軍)は戦場にフトマカリ(揚餅)を投げ入れた。すると、ハタレはそれを夢中で貪り始めたので、この隙に一気に攻め立て、ハタレを悉く捕らえた。さらにヰツナミチの頭領もワラヒナワ(蕨縄)で捕らえ、計九千九百人を縛り上げた。その連なりは、あたかもヒヨトリ草のようであった。
タケミカツチは、これらの捕虜を引き連れて自ら山を登ったが、その途上で首が締まって死ぬ者が多発した。この死者は山に埋め、生き残った百人をササヤマの牢屋に収容した。そして、タケミカツチは故意ではなかったものの、多くのハタレを死なせたことを悔いて喪に服した。これを聞いたアマテルは、御子のクマノクスヒを現地に遣わせて様子をうかがうよう命じた。
クマノクスヒがタカノに到着すると、タケミカツチは「我の過ちによって、多くのモノマ(取り憑かれた者)を殺してしまった」と告げた。これにクマノクスヒは「そのモノマは人だったのですか?」と問うと、タケミカツチは「人のような者であった」と答えた。
クマノクスヒが帰って報告すると、アマテルは自らササヤマの牢屋に出向いてモノマを確認した。そのモノマの姿はマサル(真猿)で、顔は犬のようであった。アマテルがモノマに出自を問うと、モノマは「昔、先祖の母は真猿に嫁いだと聞きます。そのため、代を重ねるとみんな猿のようになったのです」と答えた。
そこで、アマテルは「タマカエシ(霊還し)をすれば人となり、死んだ者たちもタマノヲを解けば人に生まれるであろう」と詔を発した。すると、百人のモノマは「アマテル神よ、ぜひとも我々を人にしてください」と願い、死んでいった。
アマテルは、このモノマの願いを受けて直ちに「ココストノミチ(ココストの根を結ぶ文)」の実践に入った。そこで、ツハモノヌシ、フツヌシ、タケミカツチを召して「タマカエシ(霊還し)」の儀式を執り行った。
このことから、ココストの道はこの地のサルサルサハ(猿更沢)を起源とするのである。
カダによるキクミチ戦(狐神)
今度は筑紫の三人のハタレが蜂起し、ナカクニの花山の野を中心に軍勢を集めた。そこでアマテルは詔し、ウケモチの子孫であるカダマロを偵察として派遣した。
カダマロが花山に着くと、キクミチ(キツネとクツネによって構成されるハタレの軍勢)が作った幻影を見せられた。それは、菊が咲き乱れる様子や、泥水が沸き立って起こる叢雲、灯火(たひ)や蛍火が舞う様子、不気味な笑い声というものであった。さらにイカリヒ(怒り霊)がアオタマ(穢汚霊)を吐いてゆく手を阻んだので、カダマロは一度退いてアマテルに報告することにした。
カダマロの報告を受けたアマテルは、しばらく考えて次のように詔した。
「これは『キ・ク(キツネとクツネ)』であろう。キツネとは『東・西・北(キ・ツ・ネ)』と同じと考えるべし。木(東)は根(北)より生るのだから、西・南を経て北に至り、そこに住み着いた鼠を油で揚げて与えればよい。
しかし、クツネはキツネとは少々異なり、特に煙の匂いを嫌がる。ゆえに、クツネにはハシカミ(椒=香辛料・刺激のある実)である『陽香(ショウガ)』や『陰香(ミョウガ)』を燻して追い払うのが良いだろう」
この戦略を授かったカダマロは これを諸守に伝えると、戦場である花山の野に向かった。
花山の野では、ハタレ三人が咲き乱れる菊の色を幾度も変えて、カミイクサを翻弄した。しかし、カダマロはアマテルの戦略に従って、戦場に「揚げ鼠」を投げ入れると、キ・クの民はこれを奪い合いながら貪り食った。この隙にカミイクサが勢いよく攻め立てると、キ・クの民は揚げ鼠を捨てて逃げていったので、それを追い詰めて千人を捕らえることに成功した。
カダマロが直ちに処刑を命じると、捕虜となったキ・クの民の皆は嘆きながら「我々は降参します。天民に仕えますので命だけはお助けください」と命乞いをした。カダマロは哀れに思い、縄を解いて許してやることにし、代わりにワラ縄をなわせることにした。
カダマロは残りの軍勢も捉えようと、敵に向けて「ハジカミ(山椒)」と「陰香(ミョウガ)」を燻しかけると、敵の体勢は乱れていった。カミイクサは、この乱れたところを叩いていき、さらに多くの敵を捕らえることに成功した。
そして、頭領である三人のハタレも燻して追い詰め、三里の野に張り巡らせた網の中に追い込んで全員を捕らえた。こうして捕らえたキ・クツネは数珠繋ぎにされ、その数は総勢三十三万にも及んだ。この内の頭領の三人は牢に収容し、カミイクサは凱旋を果たした。
アマテルによるハルナハハミチ戦(蝕霊)
今度はヒスミ・ヒタカミ(東北)でハタレが蜂起し、カグヤマの下から向かって来るとの報告があった。フタイワウラ(二岩浦)に寄せられる報告の数があまりに多く、現場での対処が難航したため、諸守はタカマ(中央政府)に集まって会議を開いた。皆で話し合った結果、アマテルの御幸を仰ぐことになった。
そして、遂にアマテル自身が御幸することになり、この戦で指揮を執ることになった。この際のアマテルの座す出車の中には、セオリツヒメとアキツヒメが侍していた。また、出車の左には白駒に乗ったイフキヌシが付き、右には黒駒に乗ったクマノクスヒが付き添って守護していた。さらに諸人が付き添って御幸が行われ、アマテルの一行はヤマタ(山田)へと至った。
ハタレの雉(伝令)が、その様子を頭領のハルナハハミチに伝えると、ハルナハハミチは野山を変貌させて叢雲を湧き立たせ、アマテルの一行に向かって炎を吹きつけ、棘矢の霰(あられ)も降らせた。さらに鳴神(雷)を落して攻め立てると、さすがのカミイクサ(官軍)も後退せざるを得なくなった。
これにアマテルは、あらかじめ用意していたサツサモチヰ(チマキ)をウタミ(歌札)を付けて、敵の中に投げ込んだ。すると、ハタレマ(取り憑かれた者)はそのチマキに夢中になり、さらに皆でウタミ(歌札)に記された次のような「サツサツヅウタ」を読み上げた。
流離手(さすらて)も ハタレもはなけ 満つ足らす
(曲者たちは未熟者であるため、呼吸を読めない)
カカンなすかも 手立尽き 故ノンテンも あに効かす
(手がかりを得ようと藻掻くが手段は無く、故に伸展も叶わない)
日月と我は 天下を照らすさ
(それでも、日月と私は天下を照らすのだ)
この歌に激昂したハタレは再び矢の霰(あられ)を降らせたが、アマテルのタミメ(手印)によって防がれた。これにハタレは益々怒って火花を吹いて浴びせかけたが、アマテルは水の神・ミツハメを招いて炎を消した。
こうして手立てを失ったハルナハハミチが逃げようと背を向けた時、タチカラヲがすかさずハルナハハミチに飛びかかり、互いに力を比べて競い合ったが、遂にはハルナハハミチが負けてタチカラヲに縛り上げられた。ハルナハハミチが捕らえられると、手下のハタレマ(取り憑かれた者)どもは悉く捕らえられ、アマテルの前に引き据えられた。
ハタレのタマガエシとカダノカミ(稲荷神)のはじまり
ここで出車の垂が上げられ、アマテル、セオリツヒメ、アキツヒメが顔を出した。そして、ハルナハハミチらのタマガエシのための儀式の準備が行われた。
まず、アマテルがヤサカニノマカルタマを出した。
次に、セオリツヒメがマフツノヤタカガミを出した。
次に、アキツヒメがクサナギノヤヱツルギを出した。
ここでイフキヌシがハルナハハミチに反乱の動機を問うと、ハルナハハミチはこのように答えた。
「根のマスヒト(アメオシヒ)が、ヤツカレ(僕)に『功を立てれば国守の地位を約束してやろう。これはソサノヲの詔である』と教えたのだ」
これにイフキヌシは「それがマフツ(真実)というのであれば鏡を見よ」と言い、ハルナハハミチの姿を御鏡に映した。すると、鏡に映ったハルナらの姿には悉く翼があったので、イフキヌシは「このハタレはヌヱアシモチである。変化の術でたぶらかす輩はすべて斬ろう」と言った。
この後、クマノクスヒ(クマノカミの祭主)がクマノカミを招くと八羽のカラス(クマノカミの神使)が飛んで来た。クマノクスヒはハルナハハミチらに「チの浄化の儀式」をさせるために、そのチ(血・霊)を絞って誓書を書かせた。さらに、潮を浴びさせて再び鏡に姿を写した際、その者が人の姿として映った者は民として受け入れることにした。こうして人の姿に映った六十万の者は民となった。
また、以前に捕らえたムハタレも、同様の儀式によって裁くことになった。
そこでハルナハハミチの手下のモノマ五千人と、地方の役人に預けていた四千人のチを濯いだ。その際、鏡に写したキクミチの頭領三人の姿にキツネの影があったので、これらをミツキツネ(三狐)と呼ぶようになった。この三狐および手下の三十三万人はタマタチ(処刑)されることが決まった。
しかし、カダマロはキクミチの処刑の中止を申し出て諸守に放免を頼んだが、受け入れられる様子では無かった。それでも、挫けずに七度にわたって頼み込むと、諸守は仕方なく許すことにした。
ここでアマテルは次のような詔をした。
「三彦(キクミチの頭三人)および諸狐は、ウケノミタマを守らせよ。もし違えば、速やかにタマタチ(処刑)を行うことにする。これゆえに、末永くカダマロの下に付けることにしよう」
カダは、この詔をキクミチに伝え、直ちに三彦に次のような役割を与えた。
「兄彦は此処(伊勢)に留まるべし、中彦はヤマシロ(山背=京都)の花山野へ行くべし、弟彦は東のアスカノへ行くべし」
そして、諸狐も その三彦に従わせ、各地方の田畑の鳥を追わす役目を与えた。こうした経緯で、ウケノミタマとウケモチもカダノカミ(糧の神、すなわち稲荷神)となったのである。
ヲシテを埋めた高野山
シムミチ、ヰソラ、ヰツナらも、そのチ(霊・血)を抜いてオシテ(誓書)に誓いを立てさせた。そして、これらにも潮を浴びせて御鏡に映す儀式をし、その際に猿やオロチ、ミツチの影映った者は救えないものとした。その結果、百三十名は処刑することに決まった。
この百三十名の処刑が決まった際、アマテルから次のような詔が下された。
「もし、この者らを斬ればミノホ(日に三度の高熱)に悩まされることになるだろう。ゆえに人になるまで助け置き、人としての善悪の道を教えて更生を待つことにする」
こうして百三十名は峰へと預けられることとなった。また、ハタレマ(取り憑かれた者)九千人と民九万人のヲシテ(誓書)は、タカノ(高野山)のタマガワ(玉川)に埋められた。
イフキヌシによるアメヱノミチ戦(天狗)
チワヤの地より、アメヱノミチからアマテルへ話し合いの申し出があった。これにアマテルはイフキヌシを召して、話し合いのための御幸の先導を命じた。
イフキヌシが御幸輿を先導してアメヱノミチの元へ到ると、アメヱノミチは「貴様がカンカミ(アマテル)か?」と問うた。これにイフキヌシは「神の従者である」と答えると、アメヱノミチは「従者よ、神はなぜ輿に乗るのだ?」と問うた。これにイフキヌシは「お前達も従者とするために乗っておられるのだ」と答えた。
これにアメヱノミチは怒って「この若輩者め!恥をかかせて我が手下としてやろう!」と言って、ハタタカミ(雷)を鳴り巡らせたが、イフキヌシは雷の神・ウツロヰを招いてかき消した。次にアメヱノミチは叢雲を湧かせて周辺を覆って暗くしたが、イフキヌシは風の神・シナトを招いて吹き払った。次にアメヱノミチは炎を吐いてムロ(室)を焼いたが、イフキヌシは水の神・タツタヒメを招いて炎を消した。
とうとうアメヱノミチは行き詰まり、礫の霰(あられ)を降らせて攻め込んできたので、カミイクサ(官軍)はヒレ(領巾)を着て対処し、敵中にカグ(橘の実)を投げ入れた。すると、ハタレマ(取り憑かれた者)たちが競ってカグを奪い合ったので、カミイクサは その隙を突いて一気に攻め立て、カグに夢中になったハタレマどもを捕らえた。
すると、今度はハタレもヒレを着て、マハスハヰ(ベーゴマ)のように回転してカミイクサを翻弄した。これの対処にイフキヌシは思考を巡らせ、ホラ貝を吹かせてハタレのヒレを消してしまい、再びカグを投げ入れて そのハタレらも討った。
いよいよ手が無くなってきたアメヱノミチは、槌(つち)を振るって神(アマテル)を襲おうとしたが、これにアマテルはニキテ(手印)を組んで槌をトベラノハウチワ(天狗の団扇)に変えてしまった。打つ手が無くなったアメヱノミチは逃げようとしたが、これをタチカラヲが捕らえて縄で縛りあげて「お前も君の従者となるべきだと思うが、どうだ?」と問うたが、アメヱノミチは何も言わなかった。
そこでタチカラヲが斬ろうとすると、イフキヌシが制止してアメヱノミチにアマテルの従者となる誓いを立てさせた。これにより、十万のモノマは天狗影(アヰヌカケ)の呪縛やミノホ(日に三度の高熱)の難からも逃れることが出来た。こうして助命されたアメヱノミチらは「ちわやぶるかみのめくみ(アマテルの恵み)」と言って、アマテルを深く拝んだのである。
フタミノイワのマフツノカガミ
こうしてカミイクサ(官軍)は、総勢七十万九千人ものハタレを捕らえることに成功した。
セオリツヒメは、ヒトナルノリ(人成る法)の御鏡を持ち出して、誰もがその姿を映せるように設置することにした。この出来事を以って御鏡は、後の世までハタレが人と成る真直の鏡(マフツノカガミ)とされた。
また、この御鏡を据えた岩は「フタミノイワ(直見の岩)」と名付けられた。この鏡は荒波に晒されようとも決して錆びぬ神鏡であり、末永くその輝きを伝えたという。
タカノの化物(タカノカミの由来)
誓書を埋めたタカノ(高野山)には、やがて化物が出るようになった。
しかし、イフキヌシがこの地に宮を建てて鎮めたところ、異変は収まった。
イフキヌシはこの功績を讃えられ、「タカノカミ」のヲシテ(璽)を賜ることとなった。
スミヨロシノカミ(住吉神の由来)
カナサキは、ハタレ討伐における大いなる功績により、「スミヨロシノカミ(住吉神)」のヲシテ(璽)とミハノソヲ(御衣の末)を賜った。
そして、アマテルから「私の代わりに筑紫の民を治めるべし」との詔を受けた。
カトリカミ(香取神の由来)
フツヌシは、ハタレ討伐の功績から「カトリカミ(香取神)」のヲシテ(璽)を賜った。
そして、アマテルから「カグヤマを司れ」との詔を受けた。
タケミカツチへの報償
タケミカツチは、ナルカミ(鳴神)をねじ伏せるほどの武功を称えられ、「タケモノヌシ」のヲシテ(璽)に当たるカフツチ(曲槌)を賜った。
さらに、かつての国土調査の報償として、大地の揺れを鎮めるカナイシツチ(要石槌)も授けられた。
ツハモノヌシへの報償
ツハモノヌシは、タマカエシ(霊還し)を普及させ、わだかまりの無い人の道を開いた功績を讃えられ、磯城県と「アナシウヲカミ」のヲシテ(璽)を賜った。
また、磯城県における「ウツシヒカンヲチ(写し日代治人)」となった。
ココトムスビとタマカエシ
ヰチチが完成させたタマカエシ(霊還し)が功を奏したことから、ヰチチも報償を受けることになり、ココストの根を結ぶ者としてココトムスビの名を賜った。
さらに、名と共に県を据えて「カスガトノ」と呼ばせ、尊ばせた。
カスガマロ(アマノコヤネ)の誕生
アマテルはカナサキを召して次のように詔した。
「万人は転生する際に霊を還し、乱れたタマノヲ(霊の緒)を解けば神となる。その心地は明清(カスガ)である」
これにより、里の名もヰチチの名も「カスガ(春日)」と名づけられ、「ヲキナガモリ(春日県の統治者)」という名も賜った。また、カトリの妹であるアサカヒメがココトムスビの妻となり、二人は間にカスガマロ・ワカヒコ(後のアマノコヤネ)を儲けた。
注釈
登場人物
・アマテル:『記紀』の天照大神に比定。男神。天(中央政府)の中心に鎮座する君主
・モチコ:元・北局のスケキサキ。左遷の恨みから妹ハヤコと共にオロチ化し、ハタレの中心的存在となる
・ハヤコ:元・北局のウチキサキ。左遷の恨みから姉モチコと共にオロチ化し、ハタレの中心的存在となる
・コクミ:元・ネ国の副マスヒト。死罪を免れるが、オロチに感化されてハタレ化する
・シラヒト:元・ネ国のマスヒト。死罪を免れるが、オロチに感化されてハタレ化する
・アメオシヒ:『記紀』の天押日命に比定。サホコのマスヒト。コクミ・シラヒトの上司
・ハタレ:いわゆる怨霊に比定。人の怨念が霊体となって寄り集まった存在で、他人に取り憑くとされる
・オロチ:ホツマでは大蛇ではなく愚霊(おろ・ち)の字が当てられる怨霊的存在
・ムハタレ:ハタレの軍勢の総称。八つの部隊が存在するとされる。~ミチはその一派を指すと思われる
・カナサキ:神社祭神の住吉神に比定。天の左臣。官軍の軍師となり、シムミチを討伐する
・シムミチ:ニシキオロチのハタレ。大蛇を使役し、火を吐かせたりする
・フツヌシ:『記紀』の経津主神に比定。官軍の指揮官となり、イソラミチを討伐する
・イソラミチ:幻術を操るハタレ。棘矢でフツヌシを負傷させるが、最後は隙を突かれて捕縛される
・タケミカツチ:『記紀』の建御雷神に比定。16尺の背丈で、万に優れた力を持つ。ヰツナミチを討伐する
・ヰツナミチ:猿神に比定。猿の姿の獣に取り憑くハタレ。タケミカツチに挑むが捕縛される
・カダマロ:『日本書紀』の保食神に比定。ウケモチの子孫で8代目。キクミチを討伐する
・キクミチ:化狐に比定。キツネとクツネのハタレ。幻術を操るが、弱点をつかれて捕縛される
・ウケノミタマ:『記紀』の稚産霊神および宇迦之御魂神に比定。カグツチとハニヤスの子(神霊)
・カダノカミ:カダマロの称え名。糧の神、すなわち稲荷神を指すと思われる
・三狐:神社祭神の三狐神に比定。キクミチの頭領。カダマロに命を救われ、ウケノミタマの眷属になる
・ハルナハハミチ:蝕霊に比定。翼を持ち幻術を操るハタレ。アマテルによって討伐される
・イフキヌシ:祓戸四神の気吹戸主に比定。ツキヨミの子。アマテルの護衛。神霊を招く術に長ける
・クマノクスヒ:『記紀』の熊野久須毘命に比定。アマテルの御子であり護衛。ハタレに誓書を書かせる
・アメヱノミチ:天狗に比定。幻術に長けるハタレ。イフキヌシ・アマテルと術の合戦をするが敗北
・タチカラヲ:『記紀』の天手力雄神に比定。ヒルコとオモイカネの子。官軍の豪傑
・セオリツヒメ:祓戸四神の瀬織津姫に比定。アマテルの内宮。御鏡をフタミノイワに据える
・アキツヒメ:『記紀』の速秋津比売神に比定。西局のスケキサキ。タマガエシの儀式に参加
・タカノカミ:高野明神に比定。イフキヌシの称え名
・スミヨロシノカミ:住吉神に比定。カナサキの称え名
・カトリカミ:香取神に比定。フツヌシの称え名
・タケモノヌシ:タケミカツチのの称え名。鹿島神の姿に一致するカナイシツチ(要石槌)を賜る
・ツハモノヌシ:トヨケの子。タマカエシを普及させた
・アナシウヲカミ:兵主神に比定。ツハモノヌシの称え名
・ヰチチ(カスガ):アマノコヤネの父。タマカエシの法を完成させた功労者
・カスガマロ(アマノコヤネ):『記紀』の天児屋根命に比定。ヰチチの子
関連社寺
・伏見稲荷大社:ホツマにおける「カダノカミ」の説話に比定できる
・別 名:お稲荷さん
・創建年:和銅4年(711年)
・主祭神:宇迦之御魂大神
・所在地:京都府京都市伏見区深草藪之内町68
・茜社・豊川茜稲荷神社:ホツマにおける三狐・兄彦の鎮座地に比定できる
・創建年:不明(古くから鎮座)
・主祭神:天牟羅雲命(茜社)、宇迦之御魂神(豊川茜稲荷神社)
・所在地:三重県伊勢市豊川町(伊勢神宮外宮 勾玉池畔)
・花山稲荷神社:ホツマにおける三狐・中彦の鎮座地に比定できる
・創建年:不明(平安時代以前より鎮座)
・主祭神:宇迦之御魂神、神大市比売神、大山祇神
・所在地:京都府京都市山科区西野山桜ノ馬場町273
・阿須賀稲荷神社:ホツマにおける三狐・弟彦の鎮座地に比定できる
・創建年:不明
・主祭神:三狐神
・所在地:和歌山県新宮市阿須賀1-2-28(阿須賀神社・摂社)
・丹生都比売神社:ホツマにおける「タカノカミ」の説話に比定できる
・創建年:不明(神代より鎮座と伝わる)
・第一殿祭神:丹生都比売大神(丹生明神)
・第二殿祭神:高野御子大神(狩場明神)
・第三殿祭神:大食津比売大神(気比明神)
・第四殿祭神:市杵島比売大神(厳島明神)
・所在地:和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野230
・金剛峯寺(高野山):ホツマにおける「タカノカミ」の説話に比定できる
・開 創:弘仁7年(816年)
・本 尊:薬師如来(阿閦如来とも)
・開 祖:空海(弘法大師)
・備 考:開創伝承に狩場明神(高野御子大神)が関連する
・所在地:和歌山県伊都郡高野町高野山132
・住吉神社(筑紫一宮):ホツマにおける「スミヨロシノカミ」の説話に比定できる
・創建年:不明(全国の住吉神社の始源とされる)
・主祭神:住吉三神(底筒男命、中筒男命、表筒男命)
・所在地:福岡県福岡市博多区住吉3-1-51
・住吉大社:ホツマにおける「スミヨロシノカミ」の説話に比定できる
・創建年:神功皇后摂政11年(伝承)
・主祭神:底筒男命、中筒男命、表筒男命、神功皇后
・所在地:大阪府大阪市住吉区住吉2-9-89
・香取神宮:ホツマにおける「カトリカミ」の説話に比定できる
・創建年:(伝)神武天皇18年
・主祭神:経津主大神
・所在地:千葉県香取市香取1617
・鹿島神宮:ホツマにおける「タケモノヌシ」の説話に比定できる
・創建年:(伝)神武天皇元年
・主祭神:武甕槌大神
・所在地:茨城県鹿嶋市宮中2306-1
・穴師坐兵主神社:ホツマにおける「アナシウヲカミ」の説話に比定できる
・創建年:(伝)崇神天皇60年
・主祭神:兵主大神
・所在地:奈良県桜井市穴師1065
・二見興玉神社:ホツマにおける「フタミノイワ」の説話に比定できる
・主祭神:猿田彦大神、宇迦之御魂大神
・所在地:三重県伊勢市二見町江575
※ホツマツタヱの記述との対応関係に基づく解釈
関連地
・高野山の玉川(和歌山県伊都郡高野町):高野山金剛峯寺周辺に流れる清流
・ハタレマ(取り憑かれた者)九千人と民九万人のヲシテ(誓書)が埋められた。
・その後、異変が起きたため、イフキヌシが宮を建てると治まった。
・異変を治めたイフキヌシは「タカノカミ」の称え名を与えられた。
※ホツマツタヱの記述との対応関係に基づく解釈
予備知識
カダノカミ(食糧神)について
ホツマ8文にはカダノカミ(食糧神)が成立する説話が登場します。
食糧神といえば、全国に数多く存在する稲荷神社が有名ですが、その主祭神の多くはウカノミタマとされています。この他にも、ウケモチ、オオゲツヒメなどが祀られることで知られますが、これらの神々は『記紀』に登場しています。『記紀』には、この神々が食糧にまつわることは記されますが、ウカノミタマに関してはほとんど記述がなく、それなのに数ある食糧神の中で抜きん出て主祭神とされているのかは謎です。
稲荷神社といえばキツネですが、実はキツネは食糧神の眷属とされる動物です。しかし、なぜ そうなったのかについては確実な説は無いようです。通説では、キツネが稲作における害獣であるネズミを食べる益獣だからとか、稲荷神の別名の御食津神(ミケツカミ)の音から転じたとか、仏教の神・荼枳尼天の乗物のジャッカルが日本で白狐に置き換えられたとか、色々いわれています。
また、伏見稲荷の社家である荷田氏については、通説では伏見稲荷の創建に関わった秦氏と協力関係にあり、秦氏系が神主・主流神職として位置づけられ、荷田氏は祠官・目代・御殿預などの職務を代々担当したといわれています。しかし、そのルーツは定かではなく、伝承では荷田氏は古くからこの地に住んでいた在地氏族だとされています。また、空海が稲荷山の麓で遭遇した龍頭太が荷田氏の始祖であるという伝承も存在します。
いずれにせよ、『記紀』や神社関連の資料だけでは説明がつきません。
一方で、ホツマ8文の記述によれば、ハタレの一勢力であるキクミチはキツネとクツネと呼ばれる者たちで構成されており、ホツマで八代目ウケモチに当たるカダマロによって討伐されます。このキクミチは討伐後に死罪にされそうになりますが、それをカダマロが庇って免罪となり、その代わりにカダマロの配下となり、食糧神・ウケノミタマ(ウカノミタマに比定)の眷属になることをアマテルに命じられています。
この内容は、現在の稲荷神社における祭祀の構造をスムーズに説明できる内容になっており、稲荷神という名もミカサフミ7文において「イナルカミ」という呼称として登場しています。何より、伏見稲荷の社家である荷田氏とのつながりについて、ウケモチの子孫であるカダマロが主役になっているという話が存在していることが非常に興味深いです。
ホツマが正しい歴史と言うつもりはありませんが、内容的には一見する価値があると思われます。
カスガマロ(アマノコヤネ)について
カスガマロは後の文(あや)で重要視されてくる人物で、『記紀』におけるアメノコヤネに比定されます。アメノコヤネといえば、大和朝廷において祭祀を司った中臣氏の祖神であり、日本神話のハイライトの一つである「天岩戸」において重要な役割を担う神として知られています。
ホツマにおける「天岩戸」は7文にありますが、その時にはカスガマロ(アマノコヤネ)はまだ誕生しておらず、『記紀』における役割はツハモノヌシ(兵主神に比定)が担っています。この違いが非常に興味深い点となっています。
『記紀』との主な違い(AI分析)
ハタレと反逆の描写
ホツマでは、人倫の乱れによって生じた怨霊「ハタレ」が各地で蜂起し、天に反逆する様子が具体的に描かれる。一方、『記紀』ではこうした個別の怨霊や反逆の物語はほとんど登場せず、政治的・神話的事件として抽象的に描かれるにとどまる。
官軍と戦略の描写
ホツマでは、アマテルがカナサキやフツヌシを指揮官とする「カミイクサ」を編成し、ハタレ討伐のための戦略や儀式が具体的に描かれる。『記紀』では、神々が戦略や軍事行動を組織する描写はなく、神の意思や行動は象徴的・抽象的に表現される。
タマカエシ(霊還し)の法
ホツマ独自の「タマカエシ」による霊還しの描写は、ハタレや討伐者を人の本来の状態に戻す過程を具体的に示す。『記紀』には、個々の神霊・霊魂の正常化を扱う儀式の具体的な描写は存在しない。
神格化・眷属化の描写
キクミチ討伐後のカダマロによる庇護と、ウケノミタマの眷属への任命は、氏族や祭祀体系との関係を具体的に示す。『記紀』では、神の子孫や眷属化の体系的な描写はなく、神格の由来などはほぼ言及されない。
食糧神(カダノカミ)との関連
ホツマでは、食糧神の成立とカダマロの役割を絡め、稲荷神社における祭祀構造の原型を説明する。『記紀』では、ウカノミタマやオオゲツヒメなど食糧神は登場するが、祭祀体系などの具体的な関係は描かれていない。
神名・呼称の違い
ホツマでは「カトリカミ」などの独自呼称が登場し、神々の役割や祭祀との関連性を具体化する。一方、『記紀』では神名や役割は象徴的に表現され、ホツマのような祭祀体系との直結は描かれない。
物語的・儀式的な具体性
ホツマでは、討伐戦、霊還し、鏡の使用、眷属化など、神話の各段階が物語として具体的に描かれる。『記紀』では、象徴的な描写や神の意思の表明に留まり、個々の儀式や戦闘の詳細は省略される。
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