現代語訳

・その後、ヤマトタケは叔母のヤマトヒメより賜ったムラクモノツルギを姫の家に置き、伊吹山に向かった

【本文】

 ・その帰りの伊勢路で(身体を?)労わって、都を思って歌を歌った

【異文】

 ・その帰りの伊勢路で(身体が)痛む時に館を思う歌を歌った

 ・『愛しきやし 我が家の方ゆ 雲出立ち来も』
  ・(嗚呼、麗しき我が家の方から、雲(汚穢隈)が空に立ち上って行く)
  ・(嗚呼、麗しき我が家の方から、雲(汚穢隈)の中の館に立ち上って行くのだなあ)
 ・このノコシウタ(遺歌)は、御子や親族の間で伝えられた
  ・また、館を出て、旅屋で会った客人との未練を残さないための諭し歌にもなり、深い心の導きとなった
 ・また、ヤマトタケは能褒野にて神になる時にミヤズヒメに当てた遺し歌を詠んだ
  ・『アイチタの 乙女が床に 我が置きし イセノツルキの 断ち別れるやわ』
  ・(愛知多の乙女が床に置いた我が伊勢の剣(妹背の連き)と、断ち別れることになるのだろうな)
 ・このワカは「妹背の道は連なっており、たとえ一時は別れようとも二人を結ぶ縁は切れはしない」を指す歌である
  ・故に妹背の道を導きを立てるアメノリとなった
 ・ミヤズヒメは悶えて気絶したが、それでも生きていた
  ・また、その父(オトヨ)はハラミサカオリ宮の絵を写して都に上り、若宮(オウス)の望みをそのまま申し上げた
 ・これにより、アイチタに宮が建てられたので、移転を請うた
  ・すると、大君は「タタネコをイハフサヲシカトとし、連(オトヨ)を代殿として、御子達を神逝の御供とせよ」と詔した
 ・こうして、厳かにコトヒキハラの御陵にてヤマトタケが祀られた
  ・なお、ミタマケ(神霊笥)には、白鳥が落した尾羽4つ、古市の尾羽4つ、また能褒野の冠・笏・御衣裳を納められた
  ・そして、これらをシラミコシ(白神輿)に納めてミユキ(神逝)が成ったのである

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用語解説



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原文(漢字読み下し)

・ヤマトタケ 叔母(おは)より賜(たま)ふ
・ムラクモお 姫(ひめ)か家(や)に置(お)き
・伊吹山(いふきやま)

・帰(かえ)さの伊勢路(いせち)
・労(いた)われは 都(みやこ)思(おも)ひて

・帰(かえ)り伊勢路(いせち)に
・傷(いた)むとき 館(やかた)お歌(うた)ひ

・愛(は)しきやし 我家(わきへ)の方(かた)ゆ
・雲(くも)出立(いた)ち来(く)も

・遺(のこ)し歌(うた) 御子(みこ)や親族(うから)に
・居(お)り合(あ)いの 十九(つす)は館(やかた)て
・出(い)て立(た)つは 旅屋(たひや)に会(あ)える
・客人(まろひと)と 迷(まよ)ひ残(のこ)さぬ
・諭(さと)し歌(うた) 深(ふか)き心(こころ)の
・導(みちひ)きそこれ

・能褒野(のほの)にて 神(かみ)なる時(とき)に
・遺(のこ)し歌(うた) ミヤズ姫(ひめ)へと

・アイチタの 乙女(おとめ)か床(とこ)に
・我(わ)か置(お)きし 妹背(いせ)の連(つる)きの
・断(た)ち別(わか)るやわ

・このワカは 妹背(いもせ)の道(みち)は
・連(つら)なりて 断(た)ち別(わか)るれと
・連(つり)りの緒(を)は 切(き)れはせぬそと
・導(みちひ)きお 立(た)つる陽陰法(あめのり)

・ミヤズ姫(ひめ) 悶(もた)え絶(た)え入(い)り
・やや生(い)けり 父(ちち)はハラミの
・絵(ゑ)お写(うつ)し 都(みやこ)に上(のほ)り
・若宮(わかみや)の 願(ねか)ひのままお
・申(もふ)し上(あ)け アイチタに建(た)つ
・宮(みや)成(な)りて 渡座(わたま)し請(こ)えは
・御言宣(みことのり) タタネコ斎(いは)ふ
・差使人(さをしかと) 連(むらし)代殿(かふとの)
・御子(みこ)達(たち)お 神逝(みゆき)の供(そな)え

・厳(おこそ)かに 琴弾原(ことひきはら)の
・御陵(みささき)に 落(お)ちし尾羽(おは)四(よ)つ
・古市(ふるいち)の 尾羽(おは)四(よ)つ共(とも)に
・持(も)ち来(き)たり 能褒野(のほの)の冠(かふり)
・笏(さく)御衣裳(みはも) 神霊笥(みたまけ)に入(い)れ
・白神輿(しらみこし)

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります