現代語訳

・（アマテルは続けた）
・「クスヒよ よく聞け、これはココリヒメ※から聞いた昔の話である
・クニトコタチが八方を巡った西の地をクロソノツミテ（玄圃統みの地域）という
　・これは、ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メの"カ（西・夏？）"に当たる場所である
・その名はアカカタ（赤県）といい、トヨクンヌの子孫が代々治めていた
　・しかし、年を経るにつれて和の道が忘れられ、とうとう尽きてしまうかのように思われた
・そこで、和の道の根絶を憂いたウケステメ※（西王母）は、ネノクニのタマキネ※（トヨケ・東の君）に仕えることにした
・真摯に仕えるウケステメの姿に感銘を受けたタマキネは、ココリヒメの妹にして、ヤマノミチノク※（和の道奥）を授けた
　・これに喜んで帰ったウケステメは、コロヒンキミと結ばれて御子のクロソノツモルを儲けた
　・（以来、ウケステメはニシノハハカミ（西の母尊）と称されるようになった）
・その後、ニシノハハカミ（ウケステメ）は再びタマキネの元にやってきて、国の事情を説明した
　・『コロヤマ（崑崙山）の麓では、愚かにして肉の味を嗜んでいます
　・それによって民が早死にし、今では100歳から200歳という有様です
　・稀に千歳や万歳に至る者も居ますが、日ごとに肉食が進んでいます
　・そこで、シナキミも"チヨミクサ（千齢見草）を探して来い"と嘆いています』
・これを聞いたタマキネ（トヨケ）は枯れを嘆いて このように教えた
　・『穢れた垢を祓って禊せよ、私もお前が"永らう道"を喜ぶ』
・そして、ニシノハハカミ（ウケステメ）に道を授けたという」

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用語解説

・ココリヒメ：アワナギの子で、イサナギの兄妹。『日本書紀』のククリヒメ、いわゆる白山比咩大神に当たる
・ウケステメ：アカカタ（シナ国）の出身であり、中国神話の西王母（せいおうぼ）に当たると推察される
・タマキネ：イサナミの父で、五代目タカミムスビ。豊受大神に当たり、この説話から中国神話の東王父とも推察される
・ヤマノミチノク："陰陽和合の真髄"で"和の道の奥義"を指す

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原文（漢字読み下し）

・クスヒよく聞（き）け
・ココリ姫（ひめ）　語（かた）れる如（こと）は
・トコタチの　八方（やも）を恵（めく）りて
・西（にし）の地（くに）　クロソノツミテ
・カに当（あた）る　名（な）も赤県（あかかた）の
・トヨクンヌ　代々（よよ）治（をさ）むれと
・年（とし）お経（へ）て　道（みち）尽（つ）きぬるを

・ウケステメ　根（ね）の国（くに）に来（き）て
・タマキネに　よく仕（つか）ふれは
・実（み）に応（こた）え　ココリの妹（いも）と
・結（むす）はせて　和（やま）の道奥（みちのく）
・授（さつ）けます

・ウケステメ　根（ね）の国（くに）に来（き）て
・タマキネに　よく仕（つか）ふれは
・実（み）に応（こた）え　ココリの妹（いも）と
・結（むす）はせて　和（やま）の道奥（みちのく）
・授（さつ）けます

・喜（よろこ）ひ帰（かえ）る
・ウケステメ　コロヒン君（きみ）と
・因（ちな）み合（あ）い　クロソノツモル
・御子（みこ）生（う）みて

・西（にし）の母尊（ははかみ）
・また来（き）たり　コロ山下（やまもと）は
・愚（おろ）かにて　肉味（ししあち）嗜（たし）み
・早枯（はやか）れし　百（もも）や二百（ふもも）そ
・たまゆらに　千（ち）・万（よろ）あれども
・弥々（ひひ）の肉（しし）　シナ君（いみ）出（い）てて
・千齢見草（ちよみくさ）　尋（たつ）ぬと嘆（なけく）

・我（わ）か耳（みみ）も　穢（けか）るる垢（あか）お
・禊（みそき）せし　永（なか）らふ道（みち）を
・喜（よろこ）へは　枯（か）れを嘆（なけ）きて
・道（みち）授（さつ）く

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現代語訳文の目的・留意点