現代語訳

・その後、ヤマトタケはウスヰノサカに到った
 ・このとき、別れたオトタチバナヒメを思って、東南を望んで思いやり、形見の歌見(姫の歌)を取り出して見た
  ・『真々し 相模の小野に 燃ゆる日の 火中に立ちて 問ひし君はも』
 ・これを三度読めば、「吾妻あわや(嗚呼妻よ)」と嘆き悲しんだ
  ・これは"吾妻"という地名の基になった
・一方、キビタケヒコは越路を通ってオヒワケに向い、クニサカシラ(国の盛衰)を見て回った
 ・タケヒは先に相模より蝦夷の土産を持ち帰り、これを帝(景行天皇)に捧げて服従させたことを報告した
ヤマトタケは一人で御幸して信濃・木曽路に到れば、そこは山高く、谷が微かに見えるような場所であった
 ・その道を行けば、懸橋を幾度も伝って行くような難所であり、とうとう馬も進まなくなった
 ・そのため、雲を分けるように歩いて進めば、飢えや疲れに参ってしまった
 ・そのとき、目の前にシラカ(白鹿)が現れて、息を吐いて苦しめた
 ・ヤマトタケは咄嗟に蒜を一つ弾いてシラカの目を撃ち、これを殺した
 ・すると、雲が覆いだして道を絶ったので、ヒミツノハラヒを三度宣り、シナトノカゼを呼んで吹き払った
 ・その後、神のシライヌ(白狗)が現れてヤマトタケを導いたので、美濃に出ることが出来た
 ・その際、越より帰ってきたキビタケヒコとも そこで出会った
・なお、以前より木曽路で衰え臥す者は、ハラヒマヌカル(祓いを以って免れよ)と云われていた
 ・それによれば「鹿の道を通る時は蒜を噛み、それを塗ってから渡れ、また邪息には当たってはならない」と語られていたのであった

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用語解説



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原文(漢字読み下し)

・碓氷(うすゐ)の坂(さか)に
・ヤマトタケ 別(わか)れし姫(ひめ)お
・思(おも)ひつつ 東南(きさ)お望(のそ)みて
・思(おも)ひ遣(や)り 形見(かたみ)の歌見(うたみ)
・取(と)り出(い)たし見(み)て

・真々(さねさね)し 相模(さかむ)の小野(おの)に
・燃(も)ゆる日(ひ)の 火中(ほなか)に立(た)ちて
・問(と)ひし君(きみ)はも

・これ三度(みたひ) 吾妻(あつま)あわやと
・嘆(なけ)きます 吾妻(あつま)の基(もと)や

・追分(おひわけ)に キビタケヒコは
・越路(こしち)行(ゆ)く 国盛衰(くにさかしら)お
・見(み)せしむる タケヒは先(さき)に
・相模(さかむ)より ヱミシの土産(みやけ)
・持(も)ち上(のほ)り 帝(みかと)に捧(ささ)け
・悉(ことこと)く 纏(まつ)らふ形(かたち)
・申(もふ)さしむ

・一人(ひとり)御幸(みゆき)の
・ヤマトタケ 信濃(しなの)・木曾路(きそち)は
・山(やま)高(たか)く 谷(たに)かすかにて
・葛折(つつらおり) 懸橋(かけはし)伝(つた)ひ
・馬(むま)行(ゆ)かす 雲(くも)分(わ)け歩(あゆ)み
・飢(う)え疲(つか)れ 峰(みね)の御饗(みあえ)に
・現(な)る白鹿(しらか) 前(まえ)に息(いき)吐(は)き
・苦(くる)しむる 君(きみ)は知(し)ろして
・蒜(ひる)一(ひと)つ 弾(はし)けは眼(まなこ)
・打(う)ち殺(ころ)す

・なお雲(くも)覆(おお)ひ
・道(みち)絶(た)つお 火水(ひみつ)の祓(はら)ひ
・三度(みたひ)宣(の)る シナトの風(かせ)に
・吹(ふ)き払(はら)ふ 神(かみ)の白狗(しらいぬ)
・導(みちひ)きて 美濃(みの)に出(い)つれは
・タケヒコも 越(こ)より帰(かえ)り
・ここに会(あ)ふ

・先(さき)に木曾路(きそち)の
・衰(お)え臥(ふ)すも 祓(はら)ひ免(まぬか)る
・鹿(しか)の道(ち)は 蒜(ひる)お噛(か)み塗(ぬ)り
・邪息(さかいき)に 当(あた)らしものと
・語(かた)り給(たま)ひき

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります