現代語訳

・(景行)27年(上鈴814年)
 ・12月、コウス御子(オウス)は西に向かってクマソ※らの国の情勢を窺った
  ・すると、トリイシカヤの川上に族の長(タケル※)が群れ集まってヤスクラを成していることが分かった
 ・そこでコウス君は乙女姿に変装し、衣の内に剣を隠して和みながら乙女らの中に紛れこんだ
  ・そして、クマソらのハナムシロ(宴会場)に入りこみ、酒を振る舞って皆を酔わせた
 ・その夜更け、コウス君は隠した剣を抜いて酔った長(タケル)を刺殺した
  ・すると、長(タケル)が「今暫し、その剣を止めよ、汝に言がある」と言った
  ・コウスは剣を止めると、長(タケル)から「汝は誰だ」と問われたので「皇の子のコウスである」と答えた
 ・それを聞いたクマソの長(タケル)は、このように語り始めた
  ・「我はこの国のツワモノであるが、我より劣るために従っているに過ぎない
  ・我は君のような者でないが、この奴が捧ぐ名を受け取ってくれぬか」
 ・コウスは頷いて話を聞いた
  ・そこで、クマソの長(タケル)は「汝は今より"ヤマトタケ"と名乗るがよい」と言い、そこで息絶えた
 ・こうして、ヤマトタケを名乗ったコウスは、オトヒコを派遣してクマソの朋族を皆 討って治めた
  ・そして、筑紫より航路をとって帰路に向かった
 ・その最中、アナト(穴門)や吉備を渡った時には荒ぶる者を殺し、ナミハカシハではモノヤカラを皆殺した

※作戦内容がソサノヲのヤマタノオロチ討伐に類似する

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用語解説

・クマソ:中央政府に背く襲国(九州の国々の一)、または その統治者の蔑称
・コウス(ヤマトタケ):景行天皇の御子で、破ったクマソからヤマトタケの名を賜った。『記紀』のオウス(ヤマトタケル)に当たる
・タケル:コウスが討ったクマソの長。『記紀』でいうクマソタケル・カワカミノタケルに当たる

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原文(漢字読み下し)

・コウス御子(みこ) 十二月(しはす)に行(ゆ)きて
・クマソ等(ら)か 国(くに)の盛衰(さかしら)
・窺(うかか)えは トリイシカヤか
・川上(かわかみ)に 長(たける)の族(やから)
・群(む)れ寄(よ)りて 安座(やすくら)なせは

・コウス君(きみ) 乙女姿(おとめすかた)の
・衣(みは)の内(うち) 剣(つるき)隠(かく)して
・和(やす)みせし 乙女(おとめ)の見目(みめ)に
・交(まし)われは 携(たつさ)え入(い)るる
・花筵(はなむしろ) 身(み)お上(あ)け酒(みき)の
・戯(たわむ)れや 夜更(よふ)け酔(よ)えれは

・コウス君(きみ) 肌(はた)の剣(つるき)お
・抜(ぬ)き持(も)ちて 長(たける)か胸(むね)お
・刺(さ)し通(とほ)す 長(たける)か曰(いわ)く
・今(いま)しはし 剣(つるき)止(とと)めよ
・言(こと)ありと 待(ま)ては汝(なんち)は
・誰人(たれひと)そ 皇(すへらき)の子(こ)の
・コウスなり

・長(たける)また言(い)ふ
・我(われ)はこれ 国(くに)の器者(つわもの)
・諸人(もろひと)も 我(われ)には過(す)きす
・従(したか)えり 君(きみ)の如(こと)くの
・者(もの)あらす 奴(やつこ)か捧(ささ)く
・名(な)お召(め)すや 君(きみ)聞(き)きませは
・今(いま)よりは ヤマトタケとそ
・名乗(なの)らせと 言(い)いつ終(おは)れは

・ヤマトタケ オトヒコ遣(や)りて
・朋族(ともから)お 皆(みな)討(う)ち治(をさ)め
・筑紫(つくし)より 船路(ふなち)お帰(かえ)る

・穴門(あなと)・吉備(きひ) 渡(わた)りあらふる
・者殺(ものころ)し 浪速岸端(なみはかしは)の
・曲族(ものやから) 皆(みな)殺(ころ)し得(ゑ)て

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります