現代語訳

・(垂仁)88年(上鈴775年)
 ・7月10日、君は「昔、新羅の御子のヒボコ※が苞の宝物を但馬に納めたと聞いているが、今見てみたいものである」詔した
 ・これを以って、ヒボコの曾孫のキヨヒコに差使が派遣されて、宝物が奉じられた
  ・宝物は"ハホソ"、"アシタカ"、"ウカが珠"、"イツシ小刀"、"イツシ矛"、"霊鏡"、"奠の胙据"、"イテアサの太刀"の8種である
 ・しかし、キヨヒコは"イツシ小刀"だけを残し、袖に隠して御前に出てきた
  ・皇はこれを知らずに御酒を与えれば、キヨヒコが飲む時に端から落ちて露わになった
  ・君はこれを見て「それは何だ?」と問うと、キヨヒコは隠しきれずに「捧げる宝の類です」と言った
  ・君は「その宝、主から離せない類のものか?」と問うと、キヨヒコは仕方なく捧げて、他の物と共に納め置かれた
・その後、"イツシ小刀"が消え失せてしまったため、キヨヒコを召して「どこかへ行ってしまった」と説明した
  ・すると、キヨヒコは「以前の暮れに小太刀自ら戻ってきましたが、その翌日にまた消えていました」と答えた
  ・君は畏まって問うことはせず、自ずと淡路島に到ったため、此処に神として祀って社を建てた(出石神社)

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用語解説

・ヒボコ:崇神天皇39年に来日した新羅の王子で、天皇より居住の許しを受ける。『記紀』のアメノヒボコに当たる

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原文(漢字読み下し)

・八十八年七月十日(やそやふみそか)
・御言宣(みことのり) 我(われ)聞(き)く昔(むかし)
・新羅御子(みこ) ヒボコか苞(つと)の
・宝物(たからもの) 但馬(たしま)にあるお
・今(いま)見(み)んと ヒボコか曽孫(ひまこ)
・キヨヒコに 差使(さおしか)遣(や)れは
・奉(たてまつ)る

・ハホソアシタカ
・ウカか珠(たま) イツシ小刀(こかたな)
・イツシ矛(ほこ) 霊鏡(ひかかみ)奠(くま)の
・胙据(ひもろけす) イテアサの太刀(たち)
・八(やつ)の内(うち) イツシ小刀(こかたな)
・残(のこ)し置(お)き 袖(そて)に隠(かく)して
・佩(は)き出(い)つる 皇(すへらき)これお
・知(し)ろさすて 御酒(みき)賜(たま)はれは
・飲(の)む時(とき)に 肌(はた)より落(お)ちて
・露(あら)わるる

・君(きみ)見(み)て曰(いわ)く
・それ何(なん)そ ここにキヨヒコ
・隠(かく)し得(ゑ)す 捧(ささ)く宝(たから)の
・類(たくい)なり 君(きみ)また曰(いわ)く
・その宝(たから) あに離(はな)れさる
・類(たくい)かと よって捧(ささ)けて
・納(おさ)め置(お)く

・後(のち)に開(ひら)けは
・これ失(う)せぬ キヨヒコ召(め)して
・もし行(ゆ)くや 答(こた)え申(もふ)さく
・先(さき)の暮(くれ) 小太刀(こたち)自(みつか)ら
・来(き)たれとも その翌(あす)の日(ひ)に
・また失(う)せぬ 君(きみ)畏(かしこ)みて
・また問(と)わす 自(みつか)つと到(いた)る
・淡路島(あはちしま) 神(かみ)と祭(まつ)りて
・社(やしろ)建(た)つ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります