現代語訳

・(垂仁)22年(上鈴710年)
 ・12月28日、ヤマトヒメヨシコは11歳で神に貢ぐミツエシロ※(御杖代)となった
  ・これにワカゴヲヤコが伴って、ウスメが髪櫛を上げて落したというクシタにて年を越した
 ・翌年の初日にアケノハラのイセタカミヤに入れば、叔母(トヨスキヒメ)と共にアマテル神に仕えた
 ・9月、姫は粥を以って兄のホンツワケのためにに殊を祈った、これ故にイヰノミヤ(飯の宮)という
・3年後、トヨスキヒメは齢103歳となったときに御杖代が続けられないと感じた
 ・そのため、これを見習わせる者(後継者)を予ねて願えば、この度 ヨシコ(ヤマトヒメ)が当てられた
  ・ヨシコはウチノヲミコとなり、神霊笥を担いでイセイイノから、イソベに遷って神を鎮めた
・(その後、神より)「良き宮所は南にあり」(と告げが下れば)ワカゴをそこに派遣した
 ・ヰスズカワにて、208万歳になるサルタヒコ※が現れて、ワカゴにこう告げた
  ・「我は昔、アマテル神から賜物を授かった
  ・それをサコクシロウチ(内宮)に入れてアラミタマ(荒神魂)を8万年を待った
  ・神の神宝とは、アマツヒツキノサカホコキ、ウツクシキスズ、ワイキタチである
  ・これを、カカンノンテンの時を待ち、来たときには道を表せと申された
  ・朧げで物ではない故、子にも授けずに その主(アマテル)を待ち続けた
  ・我がこれを授ければ、"ナガタ生まれのツチキミ(サルタヒコ)"として元に還ろうと思う
  ・さあ、この神宝を持ち帰って(主に)告げるが良い」
 ・こうしてサルタは神宝をオオワカゴに授けて去って行った
オオワカゴは帰ってこれを告げれば、ヤマトヒメはウチ(伊勢の宇治)に到り、このように言った
 ・「これぞ神風のイセノミヤ(妹背の宮)です、此処を(サルタの)三種を祀る源としましょう」
  ・そして、この礼を以って(サルタが座っていた)アグライシを祀った
・その後、オオハタヌシ(ワカゴ)と八十供にイソスズハラの草を刈らせた
 ・また、オチコチヤマの木を伐らせ、本末を反した
 ・そして、宮地のマナカにオオミヤハシラを敷き立てて、互い違いの木を交差させた
・こうして宮が成れば、帝(垂仁天皇)に(伊勢神宮造成の)報告をした
 ・この報告を以って、(伊勢神宮に仕えさせるものを決める)詔を発した
  ・「ミカサノヲトド(オオカシマ)はイワイヌシ(斎主)となれ
  ・また、ワタラヒトミはカンヌシ(神主)となれ
  ・また、アベタケヌガをミカワリ(君の代わり)とする
  ・また、ワニクニフクをウチカワリ(内宮の代わり)とする
  ・また、モノベトチネをミウヱ(御上后)の代わりとする
  ・また、タケヒアサトをミコカワリとする」
 ・この詔を以って、各々がイセノミヤ(妹背の宮)を詣でた

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用語解説

・ミツエシロ:斎宮(神の斎を執り行う者)であり、80人のモノノベとそれを束ねる12人の司を従える
・サルタヒコ(ツチキミ):ニニキネに仕えて、種々の功を立てた(『記紀』のサルタヒコに当たる)

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原文(漢字読み下し)

・二十二年十二月(ふそふほしはす)
・二十八日(すえやか)に ヤマト姫(ひめ)ヨシコ
・今年(ことし)十一(そひ) 神(かみ)に貢(みつ)きの
・御杖代(みつえしろ) ワカゴ親子(をやこ)か
・伴(とも)なひて ウスメか髪櫛(みくし)
・上(あ)くるとて 落(おと)す櫛田(くした)に
・年越(としこ)えて 出(い)て立(た)つ初日(はつひ)
・明(あ)けの原(はら) 妹背(いせ)高宮(たかみや)に
・入(い)りませは 叔母(おは)と仕(つか)えて
・九月姫(なつきひめ) 粥(かゐ)以(も)て兄(あに)の
・殊(こと)祈(いの)る 故(ゆえ)飯(いゐ)の宮(みや)

・三年後(のち) トヨスキ齢(よはひ)
・百三(ももみつ)て 御杖(みつえ)ならすと
・見習(みなら)わせ かねて願(ねか)えは
・この度(たひ)は ヨシコお内(うち)の
・親王(をみこ)とし 神霊笥(みたまけ)担(かつ)き
・斎野(いゐの)より 磯辺(いそへ)に移(うつ)し
・鎮(しつ)めます

・良(よ)き宮所(みやところ)
・南(さ)にありと ワカゴお遣(や)れは
・ヰスズ郷(かわ) 二百八万歳(ふもやよろほ)の
・サルタヒコ ワカゴに曰(いわ)く

・我(われ)昔(むかし) 神(かみ)の賜物(たまもの)
・サコクシロ 内宮(うちみや)に入(い)れ
・荒神霊(あらみたま) 八万年(やよろほ)待(ま)ちし
・神宝(かんたから) 和(あま)つ日月(ひつき)の
・サカホコキ 美(うつ)しき鈴(すす)
・地活太刀(わいきたち) カカンノンテン
・時(とき)待(ま)ちて 道(みち)表(あら)わせと

・朧(おほろ)けの 物(もの)ならす故(かれ)
・子(こ)にも得(ゑ)す その主(ぬし)お待(ま)つ
・これ授(さつ)け 長(なか)た生(う)まれの
・辻君(つちきみ)は 元(もと)に還(かえ)らん
・持(も)ち帰(かえ)り 告(つ)けよとて更(さ)る

・オオワカゴ 帰(かえ)り申(もふ)せは
・ヤマト姫(ひめ) 内(うち)に到(いた)りて
・見(み)て曰(いわ)く これ神風(かんかせ)の
・妹背(いせ)の宮(みや) 三種(みくさ)は祭(まつ)る
・源(みなもと)と 礼(いやま)ひ返(かえ)す
・あくら石(いし)

・オオハタヌシと
・八十供(やそとも)に ヰソスズ原(はら)の
・草(くさ)刈(か)らせ 遠近山(おちこちやま)の
・木(き)お伐(き)らせ 本末(もとすえ)戻(もと)し
・真中(まなか)以(も)て 大宮柱(おおみやはしら)
・敷(し)き立(た)てて 千木高(ちきたか)知(し)りて
・宮(みや)成(な)れは 帝(みかと)に申(もふ)し

・御言宣(みことのり) ミカサの大臣(をとと)
・斎主(いわひぬし) ワタラヒ臣(とみ)は
・神主(かんぬし)に アへタケヌガお
・御代(みかわ)りと ワニクニフクお
・内(うち)代(かわ)り モノベトチネお
・御上(みうえ)から タケヒ朝臣(あさと)お
・御子(みこ)代(かわ)り 各々(おのおの)詣(もふ)て

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります