現代語訳

【散逸文】

・ツキシホ(月経)が治まった三日月(三昼夜)の後、ヒマチ(日の出を待つこと)のために身を清めた
 ・そして、互いに笑んで若日に向かい、座って日の出を待ち望んだ
・すると、天の初日の御影が差し、二尊が思いを計らなくても光を抱く良い心地に包まれた
 ・そして、身体が潤えば腹に子を孕んだが、臨月に至っても生まれることは無かった
・この心尽くしも8年(96ヵ月)に至れば、晴れ渡る若日と共に子が生まれた
 ・その際、オホヨスカラの言祝も、3度におよぶコヱヨロシ(誕生が大いに喜ばれた)
 ・また、予てより賜物にイチヰの枝が用意され、ココリヒメ※が御湯を調えて奉った
アマネキカミ※の誕生の時、天に白雲が棚引いてハラミ山の八峰に架かり、さらに白玉の霰が降ったが、天は晴れていた
 ・故に瑞の徴を白布に描いたヤトヨノハタが作られて、これを代々立てて皇の御子の即位の典とする最初となった
・嗚呼、とても畏れ多いことである

<<前   次>>

用語解説

・ココリヒメ:アワナギの子で、イサナギの兄妹。『日本書紀』のククリヒメ、いわゆる白山比咩大神に当たる
・アマネキカミ:"陽陰の偏りがない完全な神"の意であり、アマテルを指す
・アマテル:イサナギ・イサナミの子であり、『記紀』でいうアマテラスに当たる。日月(太陽・太陰)の顕現と見なされる

<<前   次>>


原文(漢字読み下し)

・月潮(つきしほ)結(う)みて
・三日月(みかつき)の 後(のち)の日待(ひま)ちや
・潔(いさきよ)く 互(たか)ゐに笑(え)ませ
・給(たま)いつつ 若日(わかひ)に向(むか)ゐ
・御座(おわ)します 天(あめ)の初日(はつひ)の
・御影(みかけ)射(さ)す 二尊(ふたかみ)思(おも)ゐ
・計(はか)らすも 光(ひかり)お抱(ゐた)く
・心地(ここち)して 満長(みたけ)け潤(うるお)ゐ
・孕(はら)みます 月満(つきみ)つ頃(ころ)も
・生(あ)れまさす

・心(こころ)尽(つく)しも
・八年(やとせ)経(ふ)り

・晴(は)れ渡(わた)る 若日(わかひ)と共(とも)に
・生(あ)れまして

・おほよすからの
・寿(ことほき)きも 三度(みたひ)に及(およ)ふ
・越喜(いちゐのえ)

・予(かね)て賜物(たまもの)
・一位(いちゐ)の枝(え)

・ココリ姫(ひめ) 御湯(みゆ)取(と)り上(あ)けて

・遍(あまね)き神(かみ)の
・生(あ)れの時(とき) 天(あめ)に棚引(たなひ)く
・白雲(しらくも)の 架(か)かる八峰(やみね)の
・白玉(しらたま)の 霰(あられ)降(ふ)れとも
・天晴(あめは)るる 瑞(みつ)の徴(しるし)お
・白布(しらぬの)に 八豊(やとよ)の幡(はた)の
・代々(よよ)に立(た)つ 皇(すへら)の御子(みこ)の
・初(はし)めなりけり

・あな畏(かしこ)かな

<<前   次>>

現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります